特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2014年 2月 「昨年読んだ一冊の本」

●2014年 2月 「昨年読んだ一冊の本」

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中小企業診断士 野口能孝

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昨年読んだ本の中から「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)に触れてみたい。最初にお断りしておくが、滅多に小説を読んでいるわけではないし、知識もない。しかし、読めば感慨はある。

日頃、経営に腐心されておられる皆様、時折小説などを読んでみてはいかがでしょうか。

主人公の多崎つくるは名古屋の高校を卒業後に上京し、東京の大学を卒業、東京で就職し、鉄道会社で設計を担当している。36才。最近新しい恋人ができて3回目のデートで性的な関係を持った。結婚を申し込んだが「あなたにはトラウマがあるので、それを解消してほしい」と言われた。

じつは、つくるには高校時代に仲のいい5人のグループ(男3、女2)があって、いつも一緒に行動していた。5人のうちで田崎以外の男性はアカ・アオ、女性はシロ・クロとそれぞれ色で呼び合っていた。田崎だけが名前で呼ばれた。

アカは成績が図抜けて優秀で、負けず嫌い、テニスの試合に負けると不愉快になった。アオはラグビー部のフォワードで性格が明るく、多くの人に好かれた。シロはモデルのような体形で、通りですれ違った多くの人が思わず振り返って見た。音楽の才能にも恵まれ皆の前で巧みな演奏をした。クロは容貌については十人並みよりはいくらか上というところだったが、表情は生き生きとして愛嬌があった。

卒業後、ほかの4人が名古屋で大学に進み、彼だけが東京に出た。仲のいい関係はその後も続いた。しかし、大学3年の春休みに、突然、皆から拒絶され会うことができなくなった。理由は知らされないまま、苦しみ、一時は自殺も考えた。一応、立ち直ってからもシロの出てくる性夢をしばしば見た。

周到に用意された構成と無駄のない研ぎ澄まされた文章。読み進むうちに三島由紀夫の作品を読むときの興奮を感じる。

恋人の指摘を受け、16年ぶりに皆を訪ねることにした。巡礼の旅に出たのである。アオとアカはそれぞれ名古屋で仕事についていて、面談に応じ、つくるを除名した理由やシロとクロのその後の状況について語ってくれた。彼等の話ではシロは音楽学校に入ったが、3年の春につくるに薬を飲まされてレイプされたと言いだした。他の仲間は薄々嘘だと思ったが、クロがシロの側に立って強く除名を主張したという。

シロは大学卒業後、しばらく自宅でピアノの先生をしていたが、やがて浜松で一人暮らしをはじめ、数年前にマンションで絞殺された。犯人が判らないままである。
クロは名古屋に陶芸の勉強に来ていたフィンランド人と恋仲になり5年前に結婚し、現在はフィンランドに住んでいる。つくるは休暇をとりフィンランドに会いに行く。ちょうど夏休みで、クロは一家で避暑に来ていた。事情を察した夫は小さな2人の娘を連れて街に出かけた。

クロは言った。「自分はつくるがレイプの犯人ではないと信じていたが、シロが女の勘で、クロがつくるを好きだということを知っていたので、シロの側に立って強い意見を言わざるを得なかったのだ。なぜシロは嘘をいったのか。おそらくつくるを好きだったのではないか。シロは本当に誰かにレイプされていた。身ごもったあと、流産し、クロがいろいろと面倒を見た。」

つくるはクロが自分を好きだったことは知らなかった。クロの頼みで、つくるはクロをしっかりとハグし、明るいうちに分かれる。
つくるは、帰ってから恋人に一部始終を報告する。物語はここで終わっている。たぶん、そのあと二人は結婚したのではないか。

うまく表現できないが、物語を読みながら人生のいろいろなことを考えた。
高校時代に輝いていた人が広い世界に出て普通の人間になっていく姿・才能・運・とらうま・選択と時間の経過などについてである。久しぶりにいい小説に触れて、よかったと思った。

中小企業診断士 野口能孝

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