特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2013年7月「パワハラなど無縁な職場づくりのために」

●2013年7月「パワハラなど無縁な職場づくりのために」

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2013年 7月 「パワハラなど無縁な職場づくりのために」
中小企業診断士:藤平 征也

メールはyukifuji@green.ocn.ne.jpまで願います。


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年々職場で増加し、近年大きな社会問題化しているパワーハラスメント(以下パワハラ)は、様々な面で企業経営に悪影響を及ぼし、一部の限られた労働者だけではなく、働く人の誰もが係わりうる可能性のある問題です。

今回はこのパワハラ問題について、中小企業の立場から取り上げてみました。

●パワハラの定義と行為類型

1.職場のパワハラとは
 @同じ職場で働くものに対して、
 A職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(上司から部下に対して行われるもの
  だけでなく、先輩・後輩間や同僚間などの優位性を背景に行われるものを含む)を背
  景に、
 B業務の適正な範囲を超えて、
 C精神的・身体的苦痛を与えるまたは悪化させる  行為
  とされています。
  (職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告)。

2.職場パワハラに当たりうる行為類型
 職場のパワハラは、典型的には次表の6つに類型化できます(同上)。ただし、これがパ
 ワハラに該当する行為のすべてを網羅するものではなく、これ以外の行為は問題なしと
 いうことではないので注意してください。


 上記類型の@〜Bについての判断は比較的容易ですが、C〜Eについては、業務上の適
 正な指導との線引きが難しい場合があります。育成等のため良かれと思って行ったこと
 が状況如何によって相手にパワハラと受け止められるなどの悩ましい問題があります。

●パワハラ発生による訴訟等のリスク

取り組みの歴史の長いセクシャルハラスメント(セクハラ)については、男女雇用機会均等法において講ずべき雇用上の措置が明確化されていますが、パワハラについては、まだこのような法律整備は行われていません。

しかし、これまでの訴訟を通じで職場のパワハラの法的な問題点は明らかにされています。職場のパワハラを個人的な問題として企業が放置したり、対策を怠った板場合、企業(使用者)が次のような責任を問われることを十分認識しておく必要があります。

1.使用者の不法行為による損害賠償
使用者の行為が、その権限(業務命令、人事権など)の範囲を逸脱し、濫用とみなされ、労働者の権利の侵害と損害の発生(人格権の侵害、精神的苦痛など)が認められれば、不法行為として使用者の責任を問われることがあります。

2.使用者等の責任による損害賠償
労働者の行為が、使用者の業務の執行に関連して行われたもので、他の労働者への不法行為とみなされると、その不法行為について使用者責任を問われることがあります。

3.債務不履行(安全配慮義務違反)による損害賠償
使用者がパワハラを放置したり、是認したりしていると、使用者が労働契約上労働者に対して負っている安全配慮義務を果たしていないとして、債務不履行責任を問われることがあります。

●職場全体への悪影響

アンケート調査結果によれば、パワハラの企業への影響については、多い順に、@職場の雰囲気が悪くなる、A従業員の心の健康を害する、B従業員が十分に能力を発揮できなくなる、C職場の生産性が低下する、D人材が流出してしまう、と続き、E訴訟などによる損害賠償などの金銭的負担を生ずるとするものを上回っています。なお、F企業イメージが悪化するがこれらに続いています。

職場のパワハラは当事者のみの問題に留まらず、職場の活力、仕事への意欲、職場全体の生産性を削ぐごとにより、企業経営に大きな悪影響を及ぼすこととなります。
特に、1人ひとりの働き具合の企業業績への影響が大きく、人間関係も密接な中小企業においては、こちらの悪影響を十分認識する必要があります。

●パワハラを発生させる職場の特徴

アンケート調査結果から、パワハラが発生している職場の特徴を見ると、多い順に、@上司と部下のコミュニケーションが少ない、A正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている、B残業が多い/休みが取り難い、C失敗が許されない/失敗の許容度が低い、と続いていますが、@がAの2倍以上と他を圧倒的に引き離しています。

近年における労働環境の変化や厳しさがパワハラ発生の大きな要因になっていることは確かでしょうが、企業経営にとって重要でなおかつ従来から課題とされてきたコミュニケーションの問題がトップに来て、しかも他を圧倒していることに注目する必要があります。

●職場のパワハラをなくすために

職場のパワハラをなくすためには、次のような取り組みが考えられます。
1.企業のトップ自らがパワハラを職場からなくすべきであることを明確に示す。

2.就業規則へのパワハラ禁止規定の設定や方針・ガイドラインの策定などルールを作る。

3.十分に実態を把握する。

4.研修を実施する。

5.パワハラ防止に向けてあらゆる機会を通じて従業員に周知を図る。

上記の取り組みについては、企業の規模、体制が区々であり、また職場の実態も異なることから、実態に合わせできることからやっていくことが重要です。

これらの取り組みのベースとなるのは、従業員を大切にする、パワハラを絶対生じさせない、コミュニケーションのよい風通しの良い職場を作るといったことに対するトップの強い決意とリーダーシップであり、これはパワハラ問題に限らず経営にとって最も重視すべき基本的なことです。

このことは、中小企業、特に小規模企業におけるパワハラ問題を考える際、先ず念頭に置くべきことだと考えます。

中小企業診断士、特定社会保険労務士:藤平 征也

メールはyukifuji@green.ocn.ne.jpまで願います。


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