特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2013年4月「ISOの良いところを取り入れ、日本人の弱点を補おう」

●2013年4月「ISOの良いところを取り入れ、日本人の弱点を補おう」

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2013年 4月 「ISOの良いところを取り入れ、日本人の弱点を補おう」

中小企業診断士:川井良訓

メールはkawai65yoshi@dune.ocn.ne.jpまで願います。


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1.はじめに

ISO9001をご存知ですか? 業種を問わない経営一般のマネジメントの規格であり、品質マネジメントシステムの要求事項を規格化したものです。

既に取得されている企業も多数いらっしゃると思います。
実は、ISO9001は、日本人のビジネス上の弱点を補うことができるシステムであると私は考えています。

ISO9001の良いところを取り入れ、上手く活かせば日本の企業の経営改善にきっと役立つと思っています。

2.私が考える日本人の3つの弱点

一般的な日本人のビジネス上の弱点は、大きく3つあると私は考えています。
@“あいまいさ”、A“システム(仕組み)に弱い”、B“チェック・再発防止があまい(対症療法的)”という3つの点です。

@“あいまいさ”
先月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、“さむらいJAPAN”が準決勝でプェルトリコに惜敗したのは、記憶に新しいことと思います。
この敗戦の大きな原因の1つとして「8回のダブルスチール」の指示が“あいまい”だったことがあげられると言われています。「いけると判断すれば盗塁してもいい、というサインでした」との山本監督のコメントが、指揮官としての責任放棄であると一部の人から批判されています。

この山本監督の指示は、「以心伝心の阿うんの呼吸」で言わんとするとこを察してほしいとする日本人が持つ特有の遺伝子が、無意識に出たものと思われます。

状況によっては、あいまいさは日本人の長所にもなりますが、この“争っている”ときのチームを率いる指揮官の指示としては、日本人の短所(弱点)が出てしまったと思います。

スポーツだけでなく、ビジネスで多くの人々をマネジメントするときに、この日本人の“あいまい”さは、失敗の原因になってしまう恐れがあり弱点であると言えると思います。

A“システム(仕組み)に弱い”
また、日本人は“システム(仕組み)に弱い”と言われています。
技術(部品、素材)で勝って、製品(システム)で敗けてしまう。すり合せ技術(部品やモジュールを独自に設計し、互いに調整しながら組み合わせることで、高品質な製品をつくりあげる作業または業務プロセス)には強いが、組み合わせシステム(部品を組み合わせたシステムとしての製品)には弱いと言われています。

この例がiphoneです。iphone5の部品のうち日本製が占める割合は50%超と断トツに多い(フォールマルハウト・テクノ・ソリューションズ調査結果)。
しかし、組み合わせシステムとして出来上がった製品iphoneには、日本のガラパゴス携帯が淘汰されていっている状況にあります。

B“チェック・再発防止があまい(対症療法的)”
さらに、日本人は“チェック・再発防止があまい(対症療法的)”という体質があると私は思っています。
計画し実行するのですが、チェック・再発防止し、次の改善につなげることが少ないのではないかと私は思っています。

この最近の例としては、東電福島第1原発の地下貯水槽の放射性物質を含む汚染水漏れがあります。ビニールシートで地下貯水槽をつくっていることにも表れているように思います。皆さんの近くにも沢山あることではないでしょうか。

この日本人の“あいまいさ”と“システム(仕組み)に弱い”、“チェック・再発防止があまい(対症療法的)”の3大弱点を補完する良い方法が、ISO9001のマネジメントシステムにあるのです。

3.ISOとは何か

ISOとはInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。
各国の代表的標準化機関から成る国際標準化機関で、電気及び電子技術分野を除く全産業分野(鉱工業、農業、医薬品等)に関する国際規格の作成を行っています。

本来の略称なら頭文字をとってIOSですが、ISOという略称は、ギリシア語の「等しいこと」を意味する「ISOS(イソス)」から来ています。言葉や地域によらない略称として、世界各国共通にISOと呼んでいます。

現在すでに、いくつものISO規格が制定されています。ISOのマネジメントシステムで、代表的な規格がISO9000シリーズ(品質マネジメントシステム)とISO14000シリーズ(環境マネジメントシステム)です。

ISO9000シリーズの要求事項(認証対象)を規定しているのがISO9001規格なのです。

4.ISO9001規格の仕組み

(1)ISO9001は、「品質マネジメントシステムの要求事項」を規定しています。

品質マネジメントシステムとは、製品品質、サービスの質、業務の質、管理の質及び経営の質を、PDCAを回すことによって、継続的な改善を図るものです。

ISO9001の要求事項は約140項目がありますが、大きく分けて5つの大項目があります。
@継続的改善、A文書化、B経営者の責任、C製品・サービスに関する基準、D内部監査
です。

PDCAとは、Plan-Do-Check-Actの頭文字をとったものです。
PDCAサイクルとは、物事を計画し(Plan)、その計画を実行し(Do)、実行した結果を評価し(Check)、その評価に基づき改善し(Act)、改善したことを元の計画に反映させ(計画に戻る)、らせん状に継続的に改善(スパイラルアップという)を図ろうとする考え方です。

(2)ISO9001での主な要求事項をPDCAサイクルで示すと、具体的には次の通りです。

 @「P:計画する」とは、
  ・お客様のニーズをもとに、
  ・トップマネジメントが「品質方針」「品質目標」を決定して、
  ・その目標を達成するのに、誰が、いつまでに、何をするかを決めて、計画書や業務
   マニュアルを作成して実施することです。
 A「D:実行する」とは、
  ・すべての従業員に対し品質方針、品質目標を理解してもらい、
  ・仕事の仕方、手順を周知させるとともに、
  ・各種の計画、手順、業務指示書などによって実際の業務を正確に実施し、
  ・必要な場合には結果を記録するという活動です。
 B「C:評価する」とは、
  ・業務の実施状況を監視・測定し、
  ・進捗状況を管理することです。
 C「A:処置・改善する」とは、
  ・各種の分析データや不適合発生事例などによって、
  ・仕事のやり方や仕組みを見直し、計画通りの結果が出せるように継続的な改善を図
   ることです。

原始的なマネジメント手法は、「P:計画する」と「D:実行する」の2つのステップだけからなっていました。これに対して、PDCAサイクルの特徴は、 ⓐ「C:評価する」と「A:処置・改善する」が増えていること、ⓑ「P:計画する」から「A:処置・改善する」に至る4つのプロセスを更に次の計画に反映させることにあります。

5.ISO9001導入の主なメリット

ISO9001を導入し、PDCAを回すことによって、製品品質、サービスの質、業務の質、管理の質及び経営の質の継続的な改善を図っている場合の主なメリットは、次の通りです。

 @経営者の方針を具体化し、ベクトル合わせができる。
 A業務の実施手順が明確になり、業務効率向上、品質レベルの向上につながる。
 B責任と権限が明確になり、構成員(社員)のモラルが向上する。
 C文書化により、技術の蓄積、伝承、発展が図られる。
 D教育訓練方法が明確になり人材の能力向上が図られる。
 E継続的な内部監査により、業務効率、サービスの品質が更に向上する。

6.なぜISO9001は日本人の弱点をカバーできるのでしょうか?

日本人のビジネス上の3つの弱点は、次のようにISO9001規格によって補うことが出来ます。

 @“あいまいさ”は、ISO9001規格の「経営者の方針の明示」、「責任と権限の明確化」、
  「手順などの文書化」、「実行していることを記録により証明」、「開示」などの要求事
  項によって、明確になります。

 A“システム(仕組み)に弱い”は、ISO9001規格がシステム(仕組み)の規格である  
  ことから、製品品質、サービスの品質、管理の品質、経営の品質が、システムとして
  PDCAを回すことにより継続的に改善されることになります。
  ISO9001は「システム(仕組み)」の規格です。通常の規格は、製品の性能・形状等を
  試験し評価する「物」の規格であり、基本的には数値で適否が判断されます。しかし、
  ISO9001規格では品質マネジメントシステムが「要求事項」に適合しているかどうか
  を評価することによって、製品・サービスのプロセスの適否を判断するのです。

 B“チェック・再発防止があまい(対症療法的)”は、ISO9001がP、Dだけでなく、C、
  Aも行うことを要求しています。具体的には、「顧客要求事項の満足度の監視」、「内部
  監査」、「プロセスと製品の監視及び測定」を通じてチェック(C)がなされ、「品質方
  針」、「品質目標」、「監視結果」、「データの分析」、「是正処置」、「予防処置」、及び「マ
  ネジメントレビュー」を通じて品質マネジメントシステムの有効性が継続的に改善(D)
  されます。

7.ISO9001の仕組みをうまく活かすポイントは?
  
 @経営者の積極的な姿勢
 A全員参加
 BPDCAサイクルを回す、特に内部監査(C)、マネジメントレビュー(A)を必ず行う。
 C見える化

この4項目がISO9001の仕組みをうまく活かすポイントであり、ひいては日本人のビジネス上の3つの弱点である“あいまいさ”、“システム(仕組み)に弱い”、と“チェック・再発防止があまい(対症療法的)”を補うものであると私は考えています。

ISO9001の要求事項をうまく取り入れ、経営に活かしてみてはどうでしょうか。必ず役立つものと思います。

中小企業診断士、品質マネジメントシステム審査員補: 川井良訓

メールはkawai65yoshi@dune.ocn.ne.jpまで願います。


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