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2013年 3月 「中小企業における投資有効性の判断にはどうしたらいいか」
中小企業診断士:相原洋一
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設備投資を考えるうえで、その有効性をどのように判断してするかは重要です。
●有効性判断基準には、いろいろな手法がありますが、ここでは、一般的な現在価値法(DCF法)について、述べていきます。
中小企業の場合には、その判断次第で、企業全体の経営に大きなインパクトを与えることになりかねません。従って、長期化する低成長期にあって、安易な形での投資は極めて危険ということになります。特に、特定の製品に特化して、設備投資をすることを、十分な資金力がないままにやることは、避けるべきです。
そのためにも、ニッチビジネスを市場展開するためとして、汎用性の無い、あるいは、乏しいものに、十分検討すること無に、多額の設備投資をすることは、避けたいものです。このことは、大きなメーカーでも、キャップの共通化、ペットボトルの巻きラベルの採用による共通化を行い、コスト削減を目指しています。
こうしたことから、大企業と比べて資金力の弱い中小企業においては、当然取り組まなくてはいけないテーマということがいえます。
●次に、判断の基準とする算式構成項目についてあげていきます。
1.割引率
損益計算書と貸借対照表を作り、現在の価値に対する、将来の価値を求めるための割引率を求めていき、割引率の最も高い(リスクの最も低い)投資プランを採用することになります。
割引率(通常は資本コスト)をどう見るかということになりますが、これは、会社として基準を明確にする必要があります。ここで判断基準は、借入や増資等で資本を調達するために必要なコストである資本コストを用いることになります。
ですから、その時の資本コストを求め、その率を下回る場合には、特別な理由のない限り、また、その投資計画は、認められないことになります。
資本コストは借入金、社債等のいわゆる他人資本と言われているものは、原則としてその元金の回収が約束されているため、比較的調達コストを低くすることができるが、反対に自己資本といわれる株式は、株主にとってその元金の回収が原則約束されているものでないため、元本の返済が約束されている他人資本よりもリスクが大きいため、配当はもちろん、企業価値の増大によるキャピタルゲインを投資家は期待している。
配当金とキャピタルゲインとの合計が株式の調達コストとなり、借入金に比較し大きな金額が期待されている。
2.評価期間(何年で回収するか。)
投資額を何年で回収するかということになります。
その製品について予想されるライフサイクルの長短により、また、技術的な進歩の速いIT機器等か、技術的な進歩の遅いものかにより、決定されるべきでしょう。
高い製品は3年で回収することが望まれます。低い製品は6年でも良いかもしれません。会社として、基準を置くべきです。曖昧では危険すぎます。例外は、また設けることは避けるべきです。設備の老朽化を考慮するとき6年位で判断すべきでしょう。
3.損益計算書
損益計算書は、収入側に、設備投資により生産効率性が増し、コストダウンが可能になる金額を収入側に置き、それに呼応して増える費用を費用側に入れることにより、収益性を判断します。コストダウンの期待、及び販促費等のコストアップの比較で損益を求めます。
4.貸借対照表
貸借対照表では、投資額、売上債権額、支払債務額を求めます。売上債権額は、回収条件によります。また、支払債務も相手先との間に決めた支払条件によります。
そのうえで、在庫をどう持つかということになります。会社の基準によります。この基準は、取り扱う商・製品、取引先を考えるとき、あるべき姿を回収サイト、支払サイトなどにしてイメージします。
5.見積表の見積額の検討
この見積額は、収益性を判断する重要な要素になるので、最低3社程度は、相見積りを取るべきです。ここでは、扱っている会社が3社に届かない場合には、取れる範囲は決まるでしょうが、最大とれるようにすることが必要です。見積額の高いものほど、出来るだけ相見積りを多くとるべきです。
6.利益額の算出及び割引率の算出方法
利益は、3にあげた損益計算書にある税引後利益に資金流出の伴わない経費である、減価償却費を税引後利益に加算したネットキャッシュフロー(以下、NCFといいます)によることになります。
1年目、2年目、3年目〜というように求め、評価期間における割引後の総和が当初投資額と一致するところにおける割引率をもって、その製品に関する投資の安全性を決定づけます。どこまで、リスク負担を軽減できるかを意味します。
この時における割引率を会社の基準と比較し、投資することの是非を判断します。
算式は、下記のようになります。
―投資額=0となるときの割引率をシュミレートして求めます。
正味現在価値(NCF) 正味現在価値(NCF) 正味現在価値(NCF)
−投資額+ ――――――― + ――――――――― +…+ ―――――――――
(1+0.08(割引率)) (1+0.08(割引率))2 (1+0.08(割引率))6
ここでは、当初投資額1,000と 評価期間を6年とし、割引率を8%としています。
この算式で、割引率を8%と正味現在価値を毎年200とすると、投資額の回収が果たせるのが7年目となります。
また、10年で回収とすると、正味現在価値を毎年200とすると割引率は5.47%となります。
他方、現在価値が1年目に500、2年目に400、3年目に300、4年目に200、5年目に100、6年目に50とすると、投資額の回収が3年目、割引率は21.21%と大きくなり、その投資に対する安全性が大きくなります。
早い段階で回収していくのと、回収額が毎年同一のとの場合では、3年目での回収、割引率が21.21%に対し、6年目で回収、割引率5.47%と大きな違いとなっていきます。
以上、投資の有効性を判断するに、用いる方法として、現在価値法を取り上げてみました。
中小企業診断士:相原洋一
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