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2012年9月 「BCP(事業継続計画)をご存知ですか」
中小企業診断士 福泉 裕
メールはh-fukuiz@dg7.so-net.ne.jp
まで願います。
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1.注目を集めるBCP
BCPと言うことばを、お聞きになったことがあるでしょうか?
Business Continuity Plan の略で、日本語では一般的に事業継続計画と訳されます。どこかで聞いたことはあるけれど、中身はよく知らないという方が多いかもしれません。
このBCPが今、脚光を浴びています。きっかけは、あの東日本大震災です。
東日本大震災では、地震や津波で多くの企業が甚大な被害を受けました。また、福島第一原発の事故の影響で、操業できなくなった企業もあります。更に、被災地外でも、計画停電で操業停止せざるを得なかったり、取引先が被災したため原材料や部品を入手できなかったり、風評被害で売上が激減したりと、日本中、世界中の多くの企業が、経営に多大な影響を被りました。
このような大震災での経験を踏まえて、事業の存続を揺るがすような事態に対して、日頃から備えておこうというBCPの重要性が、再認識されているのです。
港区でも、2011年10月に交付された防災基本条例の中で、区内の全事業者に、BCP策定が努力義務として課されました。
2.BCPの考え方
BCPとは、「企業が緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、事前に取り決めておく計画」のことです。
ポイントは、どうしても守らなければならない重要な事業や業務を決めておき、緊急事態が起こった時には、その重要な部分に経営資源を優先的に配分して、許容水準以上に維持し、許容時間内に復旧するということです。
つまり、何でもいいから、目の前のできるところから全力で取りかかるというやり方ではダメだということです。
ほかは後回しにしてでも、「自社の生命線はここだ」というところに集中して、維持・復旧を図るのです。
事業の継続にとって脅威となる緊急事態には、地震の他にも、火事や風水害、テロ、インフルエンザの大流行など、様々なものがあります。
BCPとは本来、原因の如何によらず事業の継続を図るものですが、他に特別に脅威と感じるものがある場合以外は、とりあえず地震を想定リスクとして取り組めばよいでしょう。
3.中小企業にこそBCPが必要
各種調査によると、日本の大企業では既に半数以上がBCPを策定済み、あるいは策定中であり、策定予定ありを含めると大部分の企業にBCPが普及していると言えます。
ところが、中小企業では策定済みは1割強、策定中と策定予定ありを含めても3割強にしかなりません。更に半数近くは「BCPを知らない」状態であり、中小企業へのBCP普及は遅れています。
ある程度の規模以上の企業であれば、災害等によって一時的に大きなダメージを被っても、立て直すことができるでしょう。しかし、経営資源の乏しい中小企業にとっては、たった一度のダメージが、即廃業につながりかねません。
中小企業にこそ、緊急事態に備えるBCPが必要なのです。人的・物的損害への対応だけでなく、非常時における資金繰り対策などもBCPの対象となります。
そうは言っても、売上の回復・拡大やコスト削減など、他に先に取り組むべき課題が山積みだという経営者も多いかと思います。実は、災害等発生時のダメージを減少させる他に、BCPを策定することによって、
・ 取引先や市場からの評価が高まる
・ 業務の見直しを通じて企業体質が強くなる
・ 企業価値が高まる
など、多くのメリットが期待できるのです。
大震災ではっきりしたように、サプライチェーンが拡張し、企業の相互依存が深まっている今日では、取引先の被災が自社の経営にとっても脅威となります。
今後、顧客・取引先からBCP策定を要求されることが増えてくることも予想されます。更に、BCP策定は企業の社会的責任であるとも言えます。
以上のように、中小企業としても、できるだけ早めにBCPに取り組むことが望まれます。ぜひ一度、中小企業診断士等の専門家に相談されることをお勧めします。
以上
中小企業診断士 福泉 裕
メールはh-fukuiz@dg7.so-net.ne.jp
まで願います。
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