特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2012年6月「民事再生のつぼ」

●2012年6月「民事再生のつぼ」

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2012年6月 「民事再生のつぼ」
弁護士/中小企業診断士 大澤康泰

メールはosawa@ksm-lawacc.comまで願います。


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1 はじめに

私は中小企業診断士の他に弁護士でもあるので、民事再生の相談を受けることがたびたびあります。

民事再生は多数決で債務を強制的にカットして企業を再生させるという強力な手続ですが、その利用方法を十分に理解していない方も多いように思います。そこで今回は、私の経験から考える民事再生のつぼについて、ご説明申し上げることと致します。

2 どのタイミングで民事再生を検討すべきか

まず、税金や社会保険料を滞納しそうになった時です。
公租公課は遅延利息が極めて高いのに民事再生のカット対象となりません。また、通常の差押等は民事再生を行えば取り消せますが、公租公課の差押は取り消せません。そのため、滞納公租公課がある場合、民事再生の効果は弱くなってしまいます。

次に、賃金給与・退職金を遅配しそうになった時です。これら労働債権も民事再生のカット対象とならないからです。

3 どのような経営状態なら民事再生が効果的か

最低限、営業利益をプラスにできることが必要です。
金利支払がないのに赤字であれば、企業は存続できません。なお、民事再生を行った場合、危機的状況が明らかなことから、取引先の整理やリストラ等を進めやすくなる面もあります。そういった収益改善余地が残っている段階で、民事再生を検討し始めるのか好ましいといえます。

4 取引先は離れないのか

 仕入先は意外と取引を継続してもらえます。そこで取引を打ち切るより、取引を継続して、カットされた分を少しでも取り返した方がよいと考えるからです。

ただし、支払能力は疑問視されるため、現金仕入れが基本となります。そこで、後で説明する資金繰りが重要となってきます。

顧客はケースバイケースです。大手メーカー商品の販売等の業態では、民事再生を行っても商品の品質や保証内容に違いは出ないため、基本的に問題は生じません。

一方、メンテナンスや製品保証等が必重要な業態、継続的な商品・サービスの提供が重要な業態等では、企業の存続可能性が疑問視されることから、一定のマイナス影響が出てきます。
もっとも、経験上、民事再生後も以前と同様に業務を継続していれば、流れのままに取引を継続してくれる顧客の方が多いように思います。

5 資金繰りは大丈夫なのか

民事再生が始まると、当面は新たな信用を得ること(借入れや掛仕入れ)は困難となります。したがって、直前に、なるべく多くの運転資金を確保することが必要です。そのため、民事再生を検討する場合、3か月程度前から日繰りで資金繰りを把握し、タイミングを計る必要があります。
意外と、これが今までの経営の無駄を見直す良い機会となることがままあります。

6 債権者(金融機関)の賛同は得られるのか

民事再生に債権者の過半数の賛成が得られないと、当該企業は破産することになって、債権者の回収額は大きく減少します。したがって、通常の場合、民事再生に反対する債権者はそう多くありません。

もっとも、担保を持っている金融機関が担保物件の取扱いに反対したり、事業譲渡を行う場合の譲渡先のライバル会社が事業譲渡に反対したりすることはありますので、事前の根回しが重要となってきます。

7 終わりに

何れにせよ、早めの検討が重要であり、そのためには日ごろから数字の管理をきっちり行っている必要があります。そうしておくことが、民事再生を使わないで済む最善の方法であると考えられます。

弁護士/中小企業診断士 大澤康泰

メールはosawa@ksm-lawacc.comまで願います。


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