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2012年5月 「商機は身近にある」
中小企業診断士 高橋 剛次
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先日、設備工事業の中小企業の社長さんと話し合う機会があった。
中小企業の方と話す場合、仕事場での立ち話や応接室で座って話す場合でも電話、クレームの飛び込み、報告・連絡・相談の割り込みなどによってたとえば1時間の面談でも実質その半分もないことが多い。
社歴30数年、社長暦10数年、月平均工事完工高1千万円、最近の経営成績は売上高増加、黒字維持、年齢60歳代の余裕からか、話し合いにばたばたした雰囲気はなかった。
社長は最近ゼネコン依存の下請け体質からエンドユーザーをコア顧客とする自主営業路線へ経営を体質改善したいとの思いを強めている。省エネやブロードバンド設備機器買い替え補助金政策により工事受注高は増加したが、施工責任を果たすために外注費が増加して利益は却って減ってしまったからである。
以下はエンドユーザーをコア顧客にしたい「思い」はあるが、下請けどっぷり体質で来たために転換対策案が思い浮かばない社長さんとの応答の一部です。
<問い:社長さんの経営についての考え方、基本方針はどういうものでしょうか?>
<応え:経営についての考え方や経営基本方針などを書いたものはない。社員の前で「私
の経営方針はこうだ」などと言ったこともない。ゼネコンの下請け会社にとってゼネコ
ンの指示は受注継続のためには絶対であって、下請け会社の「経営方針」などはナンセン
スだ。
<問い:御社の一番大切にしているもの、財産は何ですか ?>
<応え:特に大切にしているものはない。財産価値のあるものもない>
<問い:御社の事業の基盤はどこにありますか?>
<応え:・・・ゼネコンだね、仕事をくれるから。・・・工事をする職人かな?>
<問い:御社の強みは何ですか?>
<応え:設備工事は工事基準、設備仕様が決まっているのでどの業者がやっても同じだ。
うちだけの強みというものはない。この業種でこの程度の規模では「うちの強み」など
というものをもっている業者はいない。どんぐりの背比べだ。ゼネコンは「うちの強み」
などと改めて言わなくてもよく分かっている>
<問い:設備の完成基準は決まっていても、請負仕事をする上でのやり方は業者によって
違いませんか? たとえば、挨拶、服装、言葉遣い、終業時の清掃、完成引渡し時の説明
などは「請負しごと」の一部でお客様の重要な評価要素と思いますが?>
<応え:挨拶、服装、工事部材・工具の整理整頓はやかましく言っている。うちはよくやっ
ているほうだと思う>
<問い:工事請負業では社員の技量によって製作物を完成し納品する。そこで御社はどのよ
うな社員のモチベーションと能力向上策を講じていますか?>
<応え:当社ではこういうことをしているというほどのことはしていない。近頃の若い者
はキツイ、汚いと言って直ぐ辞める。先輩社員は社外で会社の悪口を言って、若者の嫌
気を誘っている。社員教育は見返りが少ない。実際問題として、その日の業務の消化
に追われて社員能力向上指導の余裕などない>
<問い:受発注、工事、入出金などの日常業務の管理はどのようにしていますか?_>
<応え:工事関係はノートに記録している。パソコンを使うと入力漏れや入力間違いで却
って手間がかかる。金銭に関しては経理が担当し、税理士に見てもらっている。日常業
務の要所は社長が押さえており、問題はない>
<問い:営業活動はどのように行っていますか?>
<応え:営業活動はしていない。社員にお客様と営業上の話ができるものはいない。社長
がゼネコンへあいさつ回りをする程度だ。営業活動をしなくてもゼネコンは当社をよく
知っている。会社案内、工事経歴書などを作ったことはない。ホームページは研究した
ことはあるがどこの誰とも分からない人から注文を受けたくないので開設していない>
<問いかけ:いままでの話は、ゼネコンの下請としての発想で現状肯定です。社長さんの
願いはエンドユーザーを掴むことです。下請けと自主営業路線はどこが違うのかを見極
める。エンドユーザー様は何を望んでいるか? お客様の要望に応えるためには下請体質
のどこを直せばいいのか?そういう視点で業務を見直すと改善点はいくらでもあり、そ
の分エンドユーザー様の獲得と利益の増加のチャンスになると思いますが・・・>
むかし、南海ホークスの鶴岡一人監督が言いました。
「銭はグラウンドになんぼでも転がっている。どれだけ自分のポケットに納められるか
は本人の努力次第だ」と。
中小企業診断士 高橋 剛次
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