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2012年4月 「ありがとう」が社員の意欲と能力をを引き出す
中小企業診断士 宮本 一隆
メールはkzmiyamoto2003@yahoo.co.jpまで願います。
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沈滞ムード漂う組織の活性化を図るために、「褒め褒め運動」を展開して、組織風土改革を成し遂げた中堅企業があります。
この「褒め褒め運動」とは、社員あるいは部下に対し、「ありがとう」「がんばったな」「君のお陰だ」といった『心からのねぎらいの言葉、感謝の言葉』、を積極的にかけあおう、というものです。
勿論、この「褒め褒め運動」だけで、組織風土改革が達成できたわけではありませんが、ここでは、組織風土改革の成功要因の一つである「社員の動機づけ」について考えてみましょう。
その前に、当改革の全貌を把握していただくために、少し、改革の全体像に触れておきます。
当企業では、全社員の「思い」をひとつにするために、経営理念や経営方針を自分たちで、噛み砕き、腹に落とし込むための活動を行いました。自分たちは、「お客様に何を提供するのか」、「何を追及するのか」、「どのような行動をとるべきなのか」といったことを、原点に立ち帰って見つめ直しました。
当企業では、経営建て直しの中期経営計画を達成するための施策ロードマップを作成する際、「マッキンゼーの7S」を切り口に整理しております。
この「マッキンゼーの7S」とは、次の7つの項目から成っております。
@ 戦略(Strategy)
A 組織構造(Structure)
B 業務運営(Systems)
C 人材(Staff)
D 組織風土(Style)
E スキル(Skills)
F 社員の価値観(Shared Value)
中期経営計画を達成するためには、業務改善活動を継続的に実施していくことが必要であるとの認識から、「常に業務改善を行うことが当たり前という風土」を醸成しようということで、「マッキンゼーの7S」の中でも、特に、C人材(Staff)とD組織風土(Style)に重点を置きました。
そこで、まず、「身の回りの改善から取り組もう」ということで始めたことの一つが「褒め褒め運動」です。
このように、中期経営計画を達成するという目的達成のための「目的と手段」の連鎖を繰り返して「褒め褒め運動」に至りました。その「目的−手段」の関係を図1に示します。
このように、社員の意欲と能力を引き出すために、いわば、「社員の動機づけ」に注目したわけです。この社員の動機づけのために、人事評価制度の見直しや、経営情報を社員全員で共有するといった施策と同時に、今すぐに、出来ることとして、「褒め褒め運動」を開始しました。
この動機づけについて、誰しもが耳にしたことがあると思いますが、心理学者アブラハム・マズローの欲求5段階説を振り返ってみましょう。(図2参照)
マズローは、人間とは、満たされない欲求があるとそれを充足しようと行動するものだとし、人間の欲求の中には、@生理的欲求、A安全・安定性欲求、B所属・愛情欲求、C承認・尊厳欲求、D自己実現欲求の5つの段階がある。より低次の欲求が満たされると、人々の要求は、しだいに高次の要求を求めるようになる。さらに、自己実現要求こそが最高の位置にある欲求であり、ほかの欲求が満たされた人間はこの自己実現を求めるようになる と説いています。
これに対し、経営学者、沼上幹氏は、著書「組織戦略の考え方」の中で、実は最高次の自己実現欲求によって動いている人間はごく少数であり、ほとんどの人間にとって、むしろその一歩手前の承認・尊厳欲求のほうが大切なのではないか、と述べています。
実際、周囲の思惑を気にせず、自己実現欲求のもと仕事をしている人間は少ないのではないでしょか。むしろほとんどの人間は、周囲の人々から大事な人材だと承認され、感謝され、認められたいがために仕事に励んでいます。
社員に「ありがとう」、「がんばったな」「君のお陰だ」といったねぎらいの言葉をかけ、その働きに注目していたというシグナルを送るほうが大切だということです。
心から労をねぎらい、感謝することが社員の大きな動機づけに繋がります。
「褒め褒め運動」で、社員の意欲と能力の向上を図り、職場の風土改革にお役立てください。
『社員一人ひとりが、自ら考え、自ら行動するような職場を築いていきましょう。』
出展・参考文献
・「VCPCメンバーズミーテイング(2011年7月)風土改革」
・「産業能率大学 三国志に学ぶビジネス戦略」
中小企業診断士 宮本 一隆
メールはkzmiyamoto2003@yahoo.co.jpまで願います。
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