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中小企業診断士 飯野 恵美
メールはinfo.e.iino@gmail.comまで願います。
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一言に女性起業家と言っても、就業経験をもとに起業される方もいれば、主婦業に専念されていたものの趣味が高じて起業された方、子育てなど主婦業が一段落して「生きがい」を求めて起業された方、社会で活躍したい想いがあるものの就職が難しく起業された方など、女性起業家のバックグラウンドは様々です。また、事業の内容も多岐にわたります。
そのため、ここで一括りに女性起業家について書くことは少々乱暴ですが、ある傾向があるように思われますのでご紹介いたします。
●女性起業家の強み
女性起業家の大きな強みとして、主婦業や子育てなどの経験から生活者としての視点を持っていることが挙げられます。生活の中から「なぜ○○がないのだろう?」「もっと○○だったら便利なのに」というアイデアをもとに起業された女性起業家は多くいらっしゃいます。
また、コミュニケーション能力が高く、顧客のニーズに敏感です。これらの特徴は、顧客が必要としている商品やサービスを提供する上で重要な要素です。
大きな強みがある一方で、女性起業家に気を付けていただきたい弱み(落とし穴)があります。
●落とし穴@数字の管理
女性起業家はサービスや商品に対する想いは人一倍強い一方で、数字に対する想いが弱い傾向にあります。商品やサービスのアイデアは豊富にあるのだけれど、売上や利益、必要な経費のことになるとよく分からない、という方もいらっしゃいます。
原価がいくらで、家賃や人件費、広告宣伝費などの販売管理費がどの程度かかり、それらを支払うためにはどれだけの売上が必要なのか、事前に事業計画書として練る必要があります。
また当然ながら、経営者として適正な報酬を得ることのできる事業でなければなりません。
●落とし穴A従業員の採用・育成
特にサービス業の場合、従業員の採用・育成、従業員の質の確保が問題になることがあります。
例えば美容業や教室運営などのサービスは、人に依るところが大きいです。
そのため、女性起業家が一人でサービスを提供している分には問題はありませんが、従業員を雇用する場合、女性起業家と同程度のサービスを提供することができるかが問題になります。十分に満足のできる従業員の育成ができないために、気が付けば社長だけが頑張っていることがあります。
まずは、女性起業家が一人(もしくは、信頼できるパートナーと共同)で事業を行う個人ビジネスなのか、組織として事業を展開していくのか、見極めが必要です。
そして組織として事業を発展させていくためには、経営者だけが働くことでは不可能で、経営者の想いを共有した従業員の育成が不可欠です。
従業員を雇う場合、起業家のノウハウの伝授をどう行うのか、事業への想いをどう共有していくのかが、鍵となります。
●落とし穴B「ま、いっか」病
上記の2つよりも、さらに大きな落とし穴が「ま、いっか」病です。
この「ま、いっか」病は、事業で問題が生じても「好きなことを仕事にできているのだし、仕事は楽しいし、ま、いっか」と考え、改善策を立てずにそのままにしてしまうことを指します。前向きで事業に対する想いが強い人ほど、「ま、いっか」病にかかりやすいものです。
ただし場合によっては、事業から十分な利益を得ることができておらず、気付けば債務超過状態に陥り、事業を継続させる原資すら失っていることもあります。
社会生活においては、「ま、いっか」は、多少理不尽なことでも許せてしまえる魔法の言葉です。人間関係のストレスを軽減し、コミュニケーションを円滑にすることができます。
しかし、事業を行う上では小さな問題であったとしても「ま、いっか」を繰り返していると命取りにもなりかねません。
「ま、いっか」病を防ぐためには、事業計画を立て、目指すべき事業の姿やその方策を持つことです。そうすることで経営のブレを防ぎ、当初の計画からずれてしまった場合にも軌道修正をどうすべきか考えることができます。
今回ご紹介した落とし穴を克服せずに事業を続けていくと、趣味なのか、事業なのか、起業家ご本人ですら分からなくなってしまう事態にもなりかねません。
そういった事態を回避し、女性起業家の想いのつまった事業をぜひ実現していただきたいと思います。
中小企業診断士 飯野 恵美
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