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2012年2月 「地図情報で行う効率的な営業の効果」
中小企業診断士、事業再生アドバイザー(TAA、ATP) 松崎 邦彦
メールはconsul-k@bd5.so-net.ne.jpまで願います。
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厳しい経営環境下、経費の削減に工夫をし、努力されていることと思います。
しかし、営業活動については営業の弱体化に繋がるとして、交際費こそ抑制しているものの、効率化検討の対象外としている会社が多いのではないでしょうか。
今回、営業活動を強化するための効率化を提案します。
■営業活動=商談時間の確保
営業活動の中では、得意先や見込み先とどれだけ多くの商談時間が確保できているかが一つのプロセス要因になります。
営業活動時間には面談時間の他にも、移動時間や後処理・前処理にも時間が必要となります。特に営業エリアが広範囲に渡る会社では、移動に時間がかかり商談時間を多く取る事が難しい状況にあります。
全体の移動時間を効率化することで、
効率化指標=[有効な商談時間]/[営業活動時間]
の比率を上げる事による営業の効率化を考えます。
■営業担当エリアの再編
営業担当者のエリアをどのように分けているでしょうか
県別などの行政単位で分けて管理している会社も多いのではないでしょうか。しかし、港区にある会社からの移動という観点からすると決して効率的ではありません。
関東甲信越を営業エリアに持つS社(港区)は県別に担当者エリアを決めていました。この営業エリア分けを、営業担当者の基本的な足となっている鉄道の路線別に改めました。
具体例で説明しますと、以前は水戸を中心とする茨城県の担当者以外にも、都内の担当者も足立区に、千葉県の担当者も松戸市に行くために常磐線も使って移動していました。重なっていた動線を1人の担当者が常磐線に沿って営業活動を行うように改めました。
一方、茨城県でも栃木県小山(宇都宮線)に近い結城は、水戸(常磐線)と同じエリア担当ではなく宇都宮を担当する者のエリアとしました。同様に、新宿から西に向かう路線で立川市と山梨県は同じ担当、世田谷区は神奈川県と同じ担当者としました。
文字では伝わりづらいのですが、地図を広げて見ていただくと、港区にある会社から、路線に沿って放射線状に区分けした様子が見られ、納得していただけると思います。
■地図情報を使った視覚によるエリア分け
営業活動を更に細かいレベルで効率化するためには、パソコンの地図情報ソフトであるゼンリン社の「Zi」が有効です。
このソフトはExcel等で作られている得意先一覧や地域毎の売上実績等の各種データを、地図上にマークする機能や、グラフ表示、色分け表示の機能を持っています。しかも、実勢価格1万円程度と廉価です。
ゼンリン電子地図帳「Zi14」
http://www.zenrin.co.jp/product/software/z14/
まずは一覧表にある得意先/訪問先を、担当者などの種別に分け、色や形の異なるマークを地図上に表示しました。移動手段を考慮した上で俯瞰してみると、担当者別の活動範囲の効率的な再配置が見えてきます。
取引の重要度ランク別に色分けして地図情報に表示するのも一つです。営業の取引先にもランクがあり、重要な得意先ではアポイントを取り頻繁に訪問していますが、売り上げの少ない取引先ですとなかなか訪問に至らない場合もあります。
得意先に訪問している活動している中で組み込めれば良いのですが、一覧表の住所だけでは距離感が判りづらい事が多く、同じ駅にあっても市や県の行政区が異なると見過ごされる事もあります。地図情報に落とし込むことで判りやすくなります。
前述のS社では商品別に第一営業課と第二営業課に分かれていて、それぞれの課が地域別に担当者を配置していました。見方を変えれば、同じ地区に2人の営業部員がセクショナリズムを持って別々に訪問していました。2課の取引先に1課の商品を売込む事をしない場合もあります。
効率化を目的としてこの2つの課を統合したのですが、その際にもこの地図情報を使って営業ルートの再検討をしました。これによって一人の活動が高密度になり、交通費とともに移動時間も削減できました。組織の統合まで行なわなくとも、訪問できていない二課の取引先が一課の得意先の近くにある場合には、一課の部員が顔を出すなどの課を超えた連携することで、負担を増やさずに訪問頻度を上げることが可能です。
但し、渉外の担当者は取扱商品の幅が増加し、密度の濃い活動になりますので、管理職による訪問先のコントロールと支援が重要になります。
■営業エリアの拡充
営業活動を効率化して生じた余裕分を、営業エリアの拡大や質的な密度を上げるために投下しましょう。その拡充すべき地域は「大きな潜在需要がありながら、営業活動の少ないエリア」であることが効果的です。その調査にも地図情報を使います。
まずは、過去の営業成績とは別に、自社の商品が売れる「土壌」を測る指標を考えて見ましょう。主な顧客がファミリー層であるなら、30代、40代の世帯数でしょうし、法人向けサービスであるなら営業所数、自動車用品であるなら車の登録数がその地域の潜在需要を表しているでしょう。
朝日新聞社から出版されている「民力」には、これら多くのマーケティング用データが市町村や県別に掲載されています。
前述の訪問先を表示した地図情報の上に、潜在需要を地域別に色分けで表示し、自社の販売データのグラフで表示して俯瞰しましょう。
潜在需要を売上に取り込めている地域と、営業を増強する事で更に売上が見込めるターゲットとなる地域が見えて来ます。
これらのように、地図情報を使って営業活動についても効率化について一考されてはいかがでしょうか。
注意点として、営業担当者は社外では個人で行動していることが多く、個人のノウハウに裏付けられた営業活動パターンを変えたくないという意識が強い場合もあります。営業担当者への納得感を引出すには、経営者のビジョンや効率化の意図を良く伝える事が重要な課題になるでしょう。
中小企業診断士、事業再生アドバイザー(TAA、ATP) 松崎 邦彦
メールはconsul-k@bd5.so-net.ne.jpまで願います。
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