特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2012年2月「値決めは経営」

●2012年2月「値決めは経営」

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2012年2月 「値決めは経営」

中小企業診断士 寺町 常治

メールはtteramachi@ace.ocn.ne.jpまで願います。


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「値決めは経営」の言葉は、京セラ創業者の稲盛和夫さんの言葉です。
この言葉を皆さんと一緒に、少し考えて行きたいと思います。

経営の根幹は、「売上最大、経費最少」の活動にあるとの信念で、製品を売る時の値決めの重要性を力説した言葉です。稲盛さんの言葉では、
「赤字会社の特徴は安売りである。… 高く売ろうとする努力など考えたこともなく、安く売るから注文は多く、会社の中はいつも忙しい。… 利益は微々たるもので、社員は一生懸命働くがみんな安い給料しかもらえない。… その値段でどうしたらお客様が買ってくれるのか、考えに考え抜いて、その答えを出さなければならないのだ。それが経営なのだ。お客様が喜んで買ってくれる最高の値段を見抜いて、あらゆる工夫を凝らし、その値段で売る。その値決めは経営そのものであり、それを決定するのは社長の重要な仕事の一つなのである。」
と、少しでも高く売る努力しない経営者に、手厳しい内容と成っております。

2009年に大阪府商工労働部で、府内の中小企業製造業153社に就いて、「価格決定権」を持つ会社と持たない会社の業績比較の調査が行われました。
当然かも知れませんが、「価格決定権を持てない、即ち、自分で値決めが出来ない」立場の会社の業績は、持っている会社に大きく引き離されている事が、数値として出てきました。

両者の格差は、想像以上に大きなと感じます。特に、リーマンショックの08年に於いては、
価格決定権を持った会社は、経常利益率をアップさせていますが、他方、持たない会社は更に業績悪化を強いられた実態が読みとれます。

そして、経営の質的評価して、自社の事業内容に対する評価の調査も有ります。

この調査結果の「纏め」として、次の言葉が記されております。
「価格決定権を有する企業では,他社では代替できないオンリーワンの技術やサービスを提供している.そうした高付加価値を生み出すために,経営者によって明確な経営方針が打ち出され,従業員が一丸となって目標に向かう体制がとられている.同時に、企業活動は厳格な財務データの管理によって,過度なリスクを負担しない経営が貫かれていた。」

会社経営に於いて、他者が追随出来ない「オンリーワンの技術」、或いは「自分が価格決定できる製品、サービス」を持つ事が、経営の安定、従業員の満足度を高める為に、如何に大切な事かを、改めて知らされる調査結果です。

では、「価格決定権を持たない会社」とはどんな会社なのでしょうか?

冒頭の稲盛さんの言葉を借りるなら、「その値段でどうしたらお客様が買ってくれるのか、考えに考え抜いて、その答えを出してない会社」と成ります。同時に、日本の中小製造業の生い立ちから見て、今尚、「完全に下請けの会社」の状態に留まった会社が「価格決定権」を持ち得て無い会社と言えるかも知れません。

「完全に下請け状態」とは、「自社発行の仕様書」の製品を持ってない会社とも言えます。お客からの「仕様書」を頼りに製品を作る立場でしたら、容易に他社との価格競争に晒され、満足な利幅が取れない仕事に成り易くなります。

皆さんも、「痛くない注射針」の製作で有名な岡野雅行さんを、ご存知の方も多いと思います。
お客様からの依頼の「先の細い注射針」の製作を、誰も出来なかった、独特の技術で量産製造に成功された方です。

岡野さんも日経ビジネス雑誌のインタビューの中で述べておられます。
「学歴もなくてさ、安易に仕事を変えられない。俺は変えたらない、誰も使ってくれない。だから、俺はいつも最低、もう後ろはない、もう崖。崖っぷちのところで仕事してるわけだよ。絶対絶命。何しろそのハンデを挽回するような気持ちでいつも生きてるわけ。」と、考えて、考え抜いて仕事をされてこられた人です。

この闘争精神で、岡野さんは下請けの立場から抜け出そうと、金型製造から量産プラント作りへの脱皮を目指され、プレス加工技術を学ぶためプレス機の購入を決意されます。購入資金を準備するため、夜中の2時、3時まで工場を借り、毎晩一人で部品を作る内職をして、およそ8年かけて、ついにプレス機を手に入れられました。又、プレス機で製品を量産するノウハウも独学で勉強されて、新しいビジネスに挑戦されて来られた方です。そして、「痛くない注射針」で、その名を世界に不動のものとされました。

政府も、この様に中小製造業の「下請けの状態」からの自立を目指して、多くの支援策を取って来ました。それは中小企業政策の変遷に見る事が出来ます。
1963年制定の「旧・中小企業基本法」では、政府の主な中小企業支援施策は、「遅れた中小企業の救済」のスタンスで展開されました。それから40年後の1999年に「新・中小企業基本法」が改訂され、中小企業を「機動性、柔軟性、創造性」を発揮する「我が国経済のダイナミズムの源泉」と位置づけ、外的環境の変化に対して、自らリスクに挑戦し柔軟かつスピーディに対応出来る創造性に富んだ経済主体とし、自立した中小企業の実現・強化に向けた施策へと大きな転換を図りました。平たく言えば、「下請け状態からの脱皮」を目指した施策の展開と言えます。
正に、「価格決定権」を取り戻し、自分で「値決め」が出来る企業に生まれ変わる事が大切です。

港区は、新製品・新技術開発支援、産学官連携支援、各種の融資支援等に、充実した支援策を準備して、中小企業の皆様が自立した動きを高める事を支援しております。

何とかしたい気持ちは山々だが、自分からどの様にして動けば良いんだ?、と思い悩む方は、先ず「NPOみなと」にご相談下さい。大丈夫です!! 解決策は必ず見つかります。
一緒に成って考え、動いて行きましょう。

中小企業診断士 寺町 常治

メールはtteramachi@ace.ocn.ne.jpまで願います。


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