特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2012年1月「後継者の育成について思うこと(子息が学生である場合)」

●2012年1月「後継者の育成について思うこと(子息が学生である場合)」

■経営お役立ち情報  ビジネスヒント情報―――――――――――――――■

2012年1月 「後継者の育成について思うこと(子息が学生である場合)」

中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。


■―――――――――――――――――――――― NPOみなと経営支援協会−■

経営コンサルタントして「事業承継支援」を専門分野の一つとしていることから、これに関するさまざまな相談を受けています。

特に多いのが後継者に関する相談ですが、これまでこのコラム欄で「後継者の選定」をテーマに事例を紹介させていただきました。今回からは、後継者の育成を中心に実際にあった相談と助言事例について紹介させていただきます。

売上高3億円・従業員20人ほどの建設業を営んでいる50歳の社長(創業者)から、「後継者と考えている長男(20歳)が大学生3年生だが、本人の継ぐ意思がはっきりしない。今後どのように対応したら良いか」という相談を受けました。子供は2人いるが、次男は医学部に進んでおり、後継者とは考えていない。また、従業員にも経営者に相応しい人間はいないので、出来れば長男に継いで欲しいと思っているとのことでした。但し、これまで二人で正式に話し合ったことはないということでした。

そこで、私からは下記の様にアドバイスさせていただきました。なお、アドバイスに唯一の正解はありませんが、相談者が腑に落ちて実行して見ようというアドバイスがもっとも適切なものではないかと思います。

(1) 自分の意思を伝えるが、本人の意向も大事にする。

子息が後継者となる場合、自発的に「俺が継ぐよ」と言わせるのがベストです。自分の意思で継いだのであれば、どんな困難なことがあっても、へこたれずに頑張り抜くでしょう。他方、押しつけられたのであれば、困難に直面した時に親への「恨み辛み」の感情になるでしょう。

そこで、まず二人で話す機会を設けて、親として希望を伝えて下さい。但し、あくまで希望として話し、押し付けは絶対にしないでください。今の教育では「職業選択の自由」を教えていますので、押し付けたら「何で俺が親の後を継がなければならないんだ」と反発が返ってくる可能性があるからです。「いやであれば継がなくて自分の好きな道を歩んでも良い」くらいの度量を見せても良いと思います。

また、その際は、仕事の面白さについても必ず話して下さい。サラリーマンなどでは経験できない仕事の面白さを具体的に話して下さい。このことにより、長男としても自分の将来について真剣に考え始めるでしょう。この仕事の面白さを話す機会は、出来るだけ多く取るように努めて下さい。

なお、長男が「継がない」という結論を出した時でも、決して慌てないでください。「芸術家になる」「商社マンになる」などと言って家を出た方が、数年で戻ってきて後を継いだ事例はたくさんあります。実際にその職業についてみれば、その職業が本当に自分に適していて面白いかどうかがすぐに分かるからです。むしろ、このような経験を積んだ方が返って精神的に強くなり、名経営者になるかもしれません。

(2)承継する場合でも外部企業で修業させる

長男が真剣に考えて「承継しても良い」という結論に達した時でも、卒業後すぐ自分の会社に入れるというやり方は避けたほうが良いと思います。同業の大きな規模のしっかりした会社等に入れて社会経験を数年間積ませた方が後継者育成の効果は高いと思います。

理由は、使われる立場で仕事をしてみることによりサラリーマンの心情を知ることができ、自分が経営者になった時の人間管理に大いに役立つからです。また、人間としての幅も広げることができるでしょう。さらに、その会社での人的ネットワークを作ることができ、また挨拶の仕方を先輩から学ぶことができるなどのメリットがあります。

特に、挨拶の仕方については、些細なことのように思われますが、これがしっかりできないと取引先から人間性を疑われることもあります。親よりも他人から教育して貰った方が効果があります。

なお、修業期間は3〜5年ぐらいが適当です。あまり長いとその会社に染まってしまい、戻ってきてから摩擦を起こしてしまうかもしれず注意が必要です。年齢としては30歳までに自社に戻すのが良いでしょう。

(3)学生時代の過ごさせ方

ところで、後継者にしようと思った子息には、時間的余裕のある学生時代にやらせておいた方が良いことがあります。その第一は、海外留学体験とこれによる語学の修得です。日本の国際化は進むことがあっても後退することはなく、建設業でも語学が必要になる時代が必ず来ます。

第二は、建設業の仕事をするうえで持っていたほうがよい資格の修得です。卒業後に、仕事をしながら取得するのも良いのですが、時間がきつく大変になりますので、早く準備することに越したことはありません。第三は、強靭な体を鍛えるためのスポーツです。経営は体力を必要としますので、若い時から基礎体力をつけさせておいた方が良いと思います。社会に出てからは、そのスポーツで体力維持と気分転換ができるでしょう。


相談者である社長との付き合いは、これを契機として10年以上に及んでいますが、このアドバイスを踏まえて長男と何度か話し合いを持ち、長男を同業の大手会社に入社させました。そして5年間勤務の後自社に入社させ、他の従業員と同じように現場を経験させています。子息に何回かお目にかかりましたが、なかなか礼儀正しく好感のもてる後継者に育っていました。

なお、社長からは、後継者育成で他の事項でも相談を受けていましたので、次回以降このコラム欄で紹介していきたいと思います。
以上

中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。


■――――――――――――-――――- NPOみなと経営支援協会−201201―■

お役立ち情報目次へ

homeご挨拶npoみなと経営支援についてコンサルティング事業お役立ち情報(コラム)サイトマップお問い合わせリンク個人情報保護方針