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2011年11月 「ダイバーシティが企業を活性化させる」
中小企業診断士 三橋 心
メールはwindupbaby@gmail.comまで願います。
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ダイバーシティという言葉を聞いたことはあるでしょうか。
日本語で多様性という意味ですが、米国の企業では人種、性別等に関わらず、積極的に多様性を受け入れることを経営の柱にしている企業が増えています。
インターネット検索エンジン企業のグーグルでは、世界中のグーグルでダイバーシティをマネジメント(女性やマイノリティの積極的な管理職の登用等)に取り入れています。
また、ハーバード大学などの教育機関でも黒人やヒスパニック、女性などに一定の入学者枠を設け、より多様性を高めています。
米国では、人口構成に合わせた男女や人種の数を計画的に割り当てていくことが機会の「平等」につながるという発想があり、日本のように弱者を特別視せず他者と同じように扱うことが「平等」であるとする考え方とはかなり開きがあるのかもしれません。
しかし、ダイバーシティの目的は「平等」だけではありません。
営利が目的の企業が積極的にダイバーシティを取り入れる要因はなんでしょうか。
日産は経営が行き詰った際に、ルノーの支援を仰ぎ、カルロス・ゴーン社長が日本に来て「リバイバルプラン」を発表しました。ゴーン社長の公約通り、日産はV字回復を遂げましたが、その施策の一つにダイバーシティがありました。
特にデザイン部門では、これまでの日本人中心のスタッフから、様々な国籍のスタッフとの混成チームとして車のデザインに取り組みました。そして生まれたのが、新型マーチであり、フェアレディZ等でした。
斬新なデザインを取り入れ、リピーターの心をつかむと同時に新規顧客の拡大にもつなげました。
成功要因は、これまでの培ってきたブランドの歴史やスタイルを残しつつ、そこに、新しさを同居させたことではないでしょうか。
日産の例でもお分かりのように、これまでの発想の延長線上ではなかなか生まれなかったイノベーションには、ダイバーシティによる組織の活性化が大きく影響しているといえます。
多くの米国企業がダイバーシティを取り入れている「平等」の背景には、イノベーションや企業の活性化が期待できるという目的があります。
ところが日本の企業には、ダイバーシティがなかなか浸透しません。
日本の企業における女性の課長職は全体のわずか5%しかいないそうです。女性の就業者数を考えた場合に5%という数字は明らかに少ないでしょう。
新規一括採用や終身雇用が崩れてきたとはいっても、まだまだ従業員の横並び意識や同質性が強いと、どうしても変化に時間がかかります。欧米へ追いつけ追い越せといった右肩上がりの時代には、日本の同質性は強い力を発揮しました。売上げを伸ばすための答えが明確であれば、異なる考え方や意見をぶつけ合ったり、反対意見を取り入れたりすることで方向性を見出す必要が少ないからです。
しかし、現代のように価値観が多様化している中で、何が売れるがわからない時代には、同質性が強いままでは激しい環境の変化に対応できません。
そんな中で、積極的にアルバイトから社員を登用する書店のヴィレッジヴァンガードでは、アルバイトにも商品仕入の大きな権限が与えられています。役割や責任を持たせられることで、本人の成長はもとより、企業の業績アップに結びついています。また、「ユニクロ」ブランドのファーストリテーリングや楽天などはグローバル戦略のもと、日本人の採用にこだわらない展開をしています。
中小企業の製造業なども、海外からの研修生を積極的に受け入れているところが増えています。中には安い労働力を確保するためといった企業もあるでしょうが、そうしたところはいずれ淘汰されていくでしょう。
環境の変化にいち早く対応し、収益を上げやすいのは大企業より小回りにきく中小企業です。そのためにはイノベーションや組織の活性化が欠かせません。
日本の中小企業にも、そろそろダイバーシティを真剣に考える時期が来ているのかもしれません。
中小企業診断士 三橋 心
メールはwindupbaby@gmail.comまで願います。
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以 上