特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2011年11月自社の“強み”を見逃していませんか?

●2011年11月自社の“強み”を見逃していませんか?

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2011年 11月 「自社の“強み”を見逃していませんか?」
中小企業診断士 井川 和美

メールはkazumi.ikawa.co@gmail.comまで願います。


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企業にとって”強み”を生かしていくことが重要であることは、誰もが認識していることです。実際、社長に「御社の強みは何ですか?」とお聞きすると、5つや6つはスラスラとお答えいただけます。
でも、よくよくお話を伺っていると、その会社にとっては「あたりまえ」すぎて見逃されていたり、お客様へ伝えきれていない“強み”が多いことに驚かされるのです。

●“強み”はお客様が決めるもの

そもそも“強み”とは一体どういうものなのでしょうか。
本当の“強み”というものは「その企業にしかできない商品やサービスを提供する」ための源泉になるものです。

そして「ウチにしかできない」と社内で決めることではなく、お客様から見て「あの会社にしかできない」と思ってもらうことが必要なのです。
お客様が決めるのですから、お客様に正しく伝わって初めて“強み”と呼べるのです。

●多くの“強み”を生かしきれず、誤解されていたA社

数か月前に訪問したA社は、高分子化合物の研究で構造解析を行う際の支援ツールを自社開発・販売しているソフトウェア開発のベンチャー企業で、売上が伸びずに困っていらっしゃいました。

社長と専務は元々研究所に勤めており、当該分野については非常に造詣が深く、また当然ながら研究現場のこともよくご存知でした。お二人の口からは、表示データの美しさ、操作性、簡便性、信頼性などなど、自社の製品の優れているところが次から次に飛び出し、本当に自信作なんだということがひしひしと伝わってきます。しっかりとしたホームページも作成されており、サンプル画像や機能が詳細に整然と記述され、こちらも見事な出来栄えです。

でも、なぜでしょう。インパクトに欠けるのです。
それは恐らく、美しさや操作性などは、どの会社・製品でもうたわれていることなので新鮮味がなく、また“美しい”とか“使いやすい”というものはユーザの感覚によるものなので、言葉で聞いてもピンと来ないからではないでしょうか。

そこで、展示会出展を予定されていたA社に対して、ご本人たちが研究者であることを強くアピールすること、お客様の利用シーンに近いデモンストレーションを行うことをお勧めしました。

●ユーザの声から“強み”を創造

先月行われた展示会では、来場されたお客様がご自身の研究現場での活用をイメージできるデモンストレーションを見て“使える製品”であることを実感されました。さらに“話の分かる開発者”に対しては、こういう使い方がしたかった、この機能が欲しいなどの一歩踏み込んだ“ユーザの声”が集まりました。

この“ユーザの声”は、A社の製品を高く評価したものが多かったのですが、思いがけない機能がウケる一方で、不安視していた価格面や高機能不足に対してはほとんど問題視されていないなど、その評価の内容は社長らが考えていたものとは多少のギャップがありました。

また、ウリのひとつである外部連携機能の前提となるオープンデータそのものの存在や使い方を知らなかったり、なかには自社開発をしていると思わなかった(A社を販売代理店だと思っていた)などというものまであったそうです。

現在、A社では、年度当初に打ち立てていた製品のバージョンアップ計画を白紙に戻し、“ユーザの理解者”としての次期バージョンを開発中です。

●“強み”は生き物、絶えず探し出す工夫が必要

このように、A社は、自らの“強み”を具体的にアピールしたことでお客様とのより深い会話につなげることができ、そこからさらなる自社の“強み”を創造することができました。

しかし“強み”は、相対的であり流動的でもあり、決して絶対的なものではありません。
取り巻く環境の変化や時間の流れとともに変わっていきます。過去の“強み”はすでに現在の“強み”ではなくなっているかもしれません。また、現在は“強み”になり得てなくても未来に向けての“強み”も存在します。あるいは、“弱み”と思っていたものが、視点を変えることによって“強み”に転じることもあります。

自社の”強み”は一日も早く見つけてどんどん伸ばし、フルに発揮していかなければならないのですが、自社のことは自社ではわからないし、導き出す公式もありません。そのため“強み”を知るためには絶えず工夫が必要なのです。観察し、聞くことが重要なのです。

お客様は、自社、あるいは自社の商品・サービスに、何を求め、何に満足し、何に喜んでくれたのか。そしてそれを可能にしたのは自社に何があったからなのか。

本当の自社の“強み”を一度探してみてはいかがでしょうか。

「上得意の顧客に対し、わが社は他社にできないどのような仕事をしているかを聞かなければならない。顧客が常に答えを知っているわけではない。しかしどこに正しい答えを見つけたらよいかは明らかにしてくれる」(P・F・ドラッカー『創造する経営者』)

中小企業診断士 井川 和美

メールはkazumi.ikawa.co@gmail.comまで願います。


■―――――――――――――――――――NPOみなと経営支援協会−201111―■

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