●2011年 7月
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2011年7月 「マーケッティングを発明したのはだれなのでしょう?」
中小企業診断士 平田 仁志
メールはhhirata@c3-net.ne.jpまで願います。
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当たり前のことのようですが、企業にとって売り上げが増えることが一番大事なことです。
売り上げが増えていれば今はもうかっていなくても、工夫次第で利益体質への転換の可能性は極めて大きいと言えます。しかし、売り上げが減少していると打てる手は極めて限られてきます。いろいろな経費を削減し、給料カットをして何とか利益が出るようになっても社員がみんな元気をなくし、売り上げが回復するどころかもっと減ってしまう、という悪循環に陥ってしまうことも多いのです。
なにか売り上げを増やす方法は無いか、と社長さんはいつも考えていることと思います。
売り上げを増やす方法は有るのでしょうか。会社の製品やサービスを販売するための一連の方法を体系的に考えるのが「マーケッティング」だと思います。つまり、売り上げを増やすためにはマーケッティングを考えなければならないのです。
そのマーケッティングはだれが始めたのでしょう。カタカナの名前なのでアメリカとか、あるいはヨーロッパの方が昔から経済活動も盛んだったはずだからヨーロッパの人が始めたのではないかとお考えになるでしょうか。
世界初の百貨店は1852年にパリで開店したボンマルシェ百貨店だとされています。アメリカではシアーズローバックが1893年に設立されています。不特定多数のお客様を相手に売り方を考え正札販売を始めたという点で両社はマーケッティングを始めたと言えるでしょう。
ではボンマルシェ百貨店がマーケッティングの発明者でしょうか。
ドラッカーはマーケッティングの発明者として日本の会社の名前を挙げています。ドラッカーの「マネジメント」という本に次のように書かれています。
「1650年ごろ、今日の東京に進出してデパートの原型となるものを開店した三井家の人間によって、マーケッティングは発明された。シアーズの250年前に、顧客のためのバイヤーとなり、顧客のために製品を作り、顧客のために仕入れ先を育てた。返金自由とし、多様な品ぞろえを旨とした。三井家は、当時の社会の変化が、新興ブルジョアジーという新たな顧客層を生んだことを知っていた。」
三越の前身である三井越後屋の繁盛ぶりは日本永代蔵という読み物に書かれています。その記述によると一日50両の売り上げが有ったと書かれています。1両は大体10万円なので1日5百万円の売り上げということになります。ということは年間売上高は15億円以上となるのです。
この読み物は大体創業15年後に書かれています。ほとんどゼロからスタートして15年で年間売上高15億円は大したものです。
なぜそんな急成長が可能だったのでしょうか?
それはドラッカーが新興ブルジョアジーと書いている町民への販売を本格的に始めたからです。それまで呉服販売は上級武士や豪商相手の商売でお屋敷に出向いた商人が品物を見せながらその場でつけた値段で売るという方法でした。それを三井越後屋は「現金廉価掛け値なし」として正札販売を始めたのです。
お店に並べられている生地を手にとって見ながら正札で値段も確認して買える、しかもこれまで聞いていた値段より大幅に安いということからこれまでの呉服商が相手にしていなかった町民の支持を集めた結果、急成長を実現できたのです。
さて現在ではもうそんな新しいお客はいない、と思われますか。
最近でも急成長を遂げている企業はたくさんあります。そのような会社を見ると新しいお客様を見つけたことによって売り上げを増やしています。
たとえば、誰でも知っている千円床屋を始めたQBハウスはそれまで床屋に行くのはお休みの時間がたっぷりある日というのが常識だったのに、駅を歩いていてたまたま前を通りかかったから散髪しようという新しいお客様を発見しました。それはQBハウスだったら10分で散髪が終わってしまうからです。つまりサービスの提供方法を三井越後屋同様ガラッと変えることによって新しいお客様が発見できたのです。
同じような例はほかにもたくさんあります。これまで無かった新しい価値を提供することでこれまでお客様でなかった人がお客様になることによって売り上げが急増するというパターンです。
いま新しい価値と書きました。価値と言うのはお客様が良かったと思ってくれることです。御社が提供している価値は何でしょうか。
飲食店という業態はだれでも知っている業態なので飲食店を例にして考えてみましょう。
安くて味はまあまあだけど簡単に食べられるところ、牛丼とかハンバーガーとかでしょうか。
次に記念日とかに行く高いけれど味は圧倒的においしくて贅沢な感じが楽しめるところ、高級フレンチレストラン等。
そしてなじみの居酒屋のように席に着くといつものお酒が出てきて主人と話をしながら、好みのものが出てくるというお店。
同じ人でもその時々によってお店を選ぶ価値の基準は変わってきます。
御社の提供する価値は何でしょうか。便利さですか、絶対的な品質の高さですか、あるいはお得意様の癖まで知り尽くしたかゆい所に手の届くサービスでしょうか。
何を売りにするかによって、どんな社員が良いのかから始まって社内をどうするかのすべてがまるで異なってきます。
同じものを売っていても考えなければならないことが全く異なってくるのです。
御社の提供する価値は何でしょうか。
社内体制の色々なことはその価値を実現するためにできているでしょうか。
世の中全体が暗い中で、売り上げを増やすために、まず自分の提供する価値について徹底的に考え新しいお客様を見つけましょう。
ヒントが欲しいという社長さんはNPOみなとの中小企業診断士である私、平田仁志までご連絡ください。
中小企業診断士 平田 仁志
メールはhhirata@c3-net.ne.jpまで願います。
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以 上