●2011年 2月 経営理念について(その2)
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2011年2月 経営理念について考えてみましょう。(その2)
(経営理念の社内浸透・社外への認知をはかる)
中小企業診断士 東條 寮(つかさ)
メールはttojo@plum.plala.or.jpまで願います。
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●経営理念の浸透・認知をはかる段階
前回、経営理念は“社長の思いの明文化”であり、自らの“深い気づき”に基づくものである、というお話をさせて頂きました。そこで、今回は、この社長の思いをどうやって社内に浸透させ、また社外への認知をはかっていくかということについて考えてみます。
●どうやって社内に浸透させるのか?
経営理念をまとめることができれば、次は社員へ理念を浸透させ、社員個々人に社長の思いを実践し、十分伝える段階になります。ただし、そのために必要なことは、単に言葉として理解させるだけでなく、社員個々人が、実際に日々の行動あるいはお客様との接点において具体的な行動として表せるようになるまでもっていく必要があります。
実際の場面では、経営理念を踏まえた経営目標が立てられ、具体的な戦略、戦術として行動プランへの落とし込みがなされると思いますが、ここでは、経営理念の具現化という観点から社内浸透におけるポイントを、事例を踏まえながらピックアップしてみました。
@まず、“やってみる(やらせてみる)”こと
頭で理解しても、実際に体を動かして体験してみないと本当の理解にはつながりません。そこで、必要なことは、まずは“やってみること”です。
たとえば、ばんどう太郎の場合、“親孝行「人間大好き」を実践します”という経営理念の実践方法として、新入社員は、最初の給料日に親への感謝の手紙を書かせるとのことです。
ばんどう太郎の経営理念でいう親孝行とはどういうことか、社長は何を伝えようとしているのか、それを新入社員の初給料日において、自ら実践させることにより、はじめて社長の思い(経営理念)への気づきが生まれてくるのです。
A“やり続ける”こと
やってみるという行動を起こしたあとにくるハードルは、それを、“やり続けること”ができるかどうかということです。
この“やり続ける”ということは、最も大切でありながら、同時に最も難しいことでもあります。そのためには、社長自らの“強い意志と率先垂範”がポイントとなります。
たとえば、サイボクハムの場合、“緑の牧場から食卓まで”を経営スローガンとして“@
豊かな楽農文化の創造、A美味しい食文化の創造、B楽しい生活文化の創造”という理念を掲げていますが、その達成のため、世界有数のハム・ソーセージの国際コンテストへの出品を1997年から今日まで10年以上にわたり続けてきました。
これらのコンテスト参加ですでに300個以上の金メダルを獲得していますが、この“やり続ける”ことにより経営理念達成にかける経営者の意気込みが社員への浸透につながっているのです。
B“共有する”こと
3つ目のポイントは、個々人の実践を組織として“共有すること”です。
経営理念を企業全体に浸透させるためには、ある特定の個人のみで実践してもなかなか長続きするものではありません。そのためには、組織全体にどうやって浸透させる仕組みを作るかが重要なポイントになります。
たとえば、昭和測器では“一灯照隅”の経営理念の元に“自主・自律・創造の精神”を
社員の行動規範としており、自ら考え、自律的に行動できる人材づくりを目指しています。
その中でも特に注目すべきは10年以上前から継続している“社内報”の発行です。
この社内報では、社長自身の考えを述べるとともに、社員自身が自分たちの活動内容を掲載することにより、お互いの考えを共有するとともに、今やっていることは、会社の理念、方向性と一致しているかを日々確認しながら、同時に経営理念の再確認にもつながっているのです。
●どうやって社外への認知をはかるか?
経営理念は経営に対する社長の思い(哲学)を社内外に対し表明するものです。そのためには、社内への浸透はもちろんですが、社外への積極的な発信により、認知度を高めるとともに共感者(ファン)を作り出す必要もあります。
そこで、社外への発信に際し、いくつかのポイントを事例を交えながら述べてみます。
@ホームページの目立つところから発信
企業のホームページを見ると、企業の概要説明のところで経営理念を記載しているのが一般的なケースです。ただし、一般の人たちがその企業の概要説明までを読んでくれることを期待することはできません。
そこで、社長の思い(経営理念)をより社会全体に宣言したり、アピールしたりする方法としては、ホームページの目立つところから、発信する方法があります。
たとえば、ばんどう太郎では、ホームページを開くと“人間大好き・親孝行”という経営理念がそのまま一面にでてきます。これは、経営者の経営理念にかける思いの強さを表現したものであり、強いインパクトを与えています。
ばんどう太郎:
http://www.bandotaro.co.jp/
Aわかりやすい言葉(経営スローガン)で発信
何度も繰り返しになりますが、経営理念はその企業が何をもって社会(顧客、地域、従業員等の広い意味)に貢献するかという“社長の思い”の発信でもあります。
そのためには、社外に発信する場合は、経営理念をより端的にわかりやすい言葉で伝えることも重要です。
たとえば、サイボクハムでは経営理念を“緑の牧場から食卓へ”というスローガンとして打ち出すことにより、自社のミッションと経営者の意気込みをよりわかりやすくアピールしています。
サイボクハム:
http://www.saiboku.co.jp/
B故事、ことわざ等多くの人が共有できる言葉を使って発信
自らの思いを外部の人たちと共有できる共通語として、故事やことわざがあります。
これらは、その言葉に対し、共通の意味を持たせることができるため、社長の表現したい意思を言葉として受け入れられやすい土俵に乗せることが可能となります。
たとえば、昭和測器では“一灯照隅”という言葉(中国の故事からきた言葉)を東洋哲学の大家である安岡正篤さんから教わり、経営理念を表現する言葉として使われています。
それにより、自社の目指方向性や価値観をより一般の人たちとも共有しやすくなり、企業理念の浸透度を高める効果が期待できます。
昭和測器:
http://www.showasokki.co.jp/
参照事例
ばんどう太郎 :
http://www.bandotaro.co.jp/sitemap/index.html/
サイボクハム :
http://www.saiboku.co.jp/access/
昭和測器 :
http://www.showasokki.co.jp/
中小企業診断士 東條 寮
メールはttojo@plum.plala.or.jpまで願います。
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