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2011年 1月 「経営理念について考えてみましょう」(その1:社長の思いの明文化)
中小企業診断士 東條 寮(つかさ)
メールはttojo@plum.plala.or.jpまで願います。
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●経営理念について
企業経営にあたり、経営理念(*)が大切である。・・・という言葉を聞かれることは多いと思いますが、それは、なぜでしょうか?
同時に、大切だと言いながら、経営理念を明文化していない(もしくは社長の頭の中にだけある)企業、あるいは、明文化してもなかなかうまく浸透していないところも多く見受けられます。
(*)経営理念・・・事業を行うにあたっての基本的な価値観、信念、存在意義、あるいは企業として目指すべき方向性のこと。
そこで、今回、この経営理念ということについて事例を交えながら少し考えてみたいと思います。なお、この経営理念について考えるとき、3つのステップに分けて見ることにします。
1. 経営理念を生み出す段階(社長の思いの明文化)
2. 経営理念の認知・浸透をはかる段階(社員への浸透、社外への認知)
3. 経営理念を定着・発展させていく段階(組織文化として定着をはかる)
まず初回は、経営理念を生み出す段階(社長の思いの明文化)について、述べてみます。
●どうやって経営理念は生み出されるのか?
事業を立ち上げるに際し、“社長の思い”が経営理念を作り出す元となりますが、作り出された背景をみると、希望に満ちた明るい未来志向から生み出される場合ばかりではないようです。
・・・というのは、どちらかというと社長自身の厳しい、つらい体験のなかから自らの“深い気づき”によって生み出されるモノではないかとさえ私には思われます。
私が実際にお話を聞きし、感銘を受けた3人の社長さんを例にとり、説明していきます。
1)戦争体験の中で、自分の果たすべき役割は何か・・・という深い使命感から事業を起こし、経営理念を作り出した“サイボクハム”の笹崎会長。
フィリピンの激戦地から、九死に 一生を得て生還した現会長、「何か人の役に立つことがしたい」と、強く思ったことがサイボクをつくる大きなきっかけとなったとのことです。
そこで基本理念として、養豚産業を主軸とし、
@豊かな楽農文化、A美味しい食文化、B楽しい生活文化という3つを統合した
「緑の牧場から食卓まで」というスローガンを掲げる。
現在は“農業のディズニーランド”を目指す「ライフピア構想」を推進中。
この、埼玉県日高市にあるサイボクハムへは交通便があまり良くないにもかかわらず、年間380万人が訪れるほどにもなっています。
2)事業が発展しているにもかかわらず、社員がやめていく・・・という逼迫状態の中から、悩み抜いた末に経営理念を作り出した“ばんどう太郎”の青谷社長。
茨城で飲食店を開業し、順調に店舗拡大が進んでいたにもかかわらず、バブル期に従業員が次々とやめ、このままでは労務倒産の危機にまで直面しました。
そのような逼迫した状態のとき、『働いている人が、幸せでないから辞めていく。みんなを幸せにしてあげなさい』という亡き母親の声が聞こえ、これまで売上の拡大ばかりを優先させ理念を忘れていた自分を冷静に見つめ直すことが出来たです。
その体験を踏まえ生まれてきたのが“親孝行 人間大好き”という経営理念です。
現在、ばんどう太郎は、茨城県を中心に関東一円で外食事業を展開されていますが、現在目指すは、“幸福実現企業”です。
幸福実現企業とは、ばんどう太郎の従業員、お客様、関連業者さん、地域の人たちも、みんな幸福になっていただきたいということで、「飲食を通じて、よろこんでいただき、幸福のお手伝いする企業をめざす」というものです。
3)事業が行き詰まり、どうやって良いかわからない・・・という混迷の中から、人(安岡正篤氏)との出会いから深い気づきを得て、再出発の基本理念として経営理念を作り出した“昭和測器”の鵜飼社長。
名古屋で創業し、売上重視で会社運営するもうまくいかず倒産。失意の中で上京し、出会ったのが安岡正篤氏(東洋思想の大家)。
その安岡氏から教えられたのは、
「利他の心」・・・相手の喜びによってお金を頂く
「感謝の心」・・・ありとあらゆるものが通じる
「喜神」 ・・・逆境を乗り越えた時、神は喜びを与える
「陰徳」 ・・・本当の徳はだれが見ていなくても行えるもの
の4つの心をはじめとした基本的なモノの考え方でした。
この安岡氏との出会いにより経営における理念の重要性を認識しました。
そこで、経営理念として、「一灯照隅」(*)をモットーに「健全経営及び社会の“安全と快適”への貢献を目指します」、を掲げました。
以来、高い技術力を誇る振動計専門メーカーとして、40期連続黒字を継続達成中です。
(*)一灯照隅・・・たとえ一本のろうそくでも身の回りを照らせば明るくなる。それが集まればもっと明るくなる。行動力と想像力を持って、まずは自分から始めることが大切である。
●経営理念を生み出す段階(社長の思いの明文化)で大事なこと
・社長の思いを大切にする
この事業は何のためにやるのか、あるいは、当社の存在意義は何なのか? これを考え、決められるのは社長しかいません。借り物ではない自分自身の熱い思いを色々書き出してみることです。
まずはここから全てが始まります。ですから、経営理念とは、まさしく社長自身の事業への思いを社会全体に表明することとも言えます。
・背景を語る
書き出した経営理念の背景は語れますか?
なぜ、そう思ったのか? なぜ、それを目指すのか? 自分自身の経験、あるいは人との出会いを通じ、どういう“気づき”を得られたのか? 心の琴線に触れるような生々しい体験やそれを経て得られた知見であればあるほど地に足の着いた経営理念になるのではないかと思います。
・間違っていることに気づけば修正する
企業は社長の器を超えることはできないと、よく言われます。ただし、そうは言っても最初から完璧な社長というのは、なかなかおられないのではないでしょうか。様々な壁にぶつかったり、ハードルを乗り越えたりしながら、一歩一歩前進していくのが、大半の企業経営者の姿ではないかと思います。
これは経営理念についても、言えるのではないでしょうか?社長自身の器が広がることにより、いままで見えていなかったものが見えてくる。その結果、経営理念についても、変えるものと変えないもの、この判断が必要になってくるのではないかと思います。
参照
サイボクハム:
■ホームページへリンクへ
ばんどう太郎:
■ホームページへリンクへ
昭和測器:
■ホームページへリンクへ
中小企業診断士 東條 寮
メールはttojo@plum.plala.or.jpまで願います。
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