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2011年 1月 「市場は海外・新興国にあり」 中小企業も海外進出で飛躍の年に!
中小企業診断士 小谷泰三
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●日本市場から海外市場へ
私は現在、国際派中小企業診断士としてベトナム、中国、タイ等の中小企業振興と日系の海外中小企業の経営指導に携わっています。
そこで見えてくるのは、昨今、大手企業に混じってわが国の一部の中小企業が海外で稼いでいる事例が増えていることです。海外進出の大半は製造業ですが、ラーメン屋、カレーライス店、すし屋や日本料理店といった飲食業、IT・オフショア、小売業、不動産業、物流業やその他サービス業も活発に海外展開をしている時代となってきました。
最近では、海外進出メーカーは、日本向けの生産だけでなく、第三国向けやその国の市場への生産も増加しています。
若者の海外勤務志向離れが進んでいますが、このように海外で仕事をされている中小企業の経営者や従業員は、日本で働いている以上に生きがいを持っており、バイタリティがあるように私には感じられます。
日本が敗戦の焼け野原から立ち上がり高度経済を遂げたように、世界に目を転じると、多くの人口を抱えた新興国が貧困状態から脱し、豊かな国を目指し急速な経済成長の旅に飛び立ち始めました。これらの国の平均年齢は30歳以下で、目が輝き生き生きとして生活している人々が多いことです。
まだまだ多くの中小企業は、先の見えないまま狭い日本国内でパイの奪い合いをしながら厳しい事業を行っています。今こそ小説「坂の上の雲」のように、勇気をもって海外展開に活路を見出すことにチャレンジしてみては如何でしょう。
●どうして海外展開を行っていく必要があるのでしょうか
日本でも一部のヒット商品が爆発的に売れています。また、中国人が日本に来て耐久消費財や化粧品などを親戚・縁者分までお土産としていっぱい買っていくなど、日本での商売もまんざらでないと思われる経営者もおられるでしょう。
しかし、成熟してしまったわが国では購買意欲は低下し、人口の減少は避けられず、高齢者向け商品を除き多くの商品の需要は減少し、マーケットが縮小していくのは自明の理です。
企業の多くは定年で辞めていくひと以上に多くの新卒採用をせず、パートや不定期採用で間に合わせ、グローバル化した大手企業(海外での稼ぎが50%を超えた企業が続出している)では外国人を多く採用し、新卒の就職難に拍車が掛っています。
皆さんが今後の稼ぎでの宝の山といえる膨大に成長する海外市場を無視し、国内だけをターゲットにした商売や請負を続けておれば、間違いなく業績の低迷や悪化は避けられません。
日本では、常に高付加価値商品をつくり販売していくか、海外の高級ブランド品を仕入して売るか、新興国から日本製品より品質がよく、安い商品を輸入販売していくしか生き残れなくなってきているのです。
ここで海外展開の必要性を整理しますと、大きく分けて次の3つに絞ることが出来ます。
@少子高齢化と経済低迷で国内市場が縮小する中で中小企業の存続のためには、経済成長が著しく、需要が爆発する新興国市場や日本製品に対する評価の高い欧米消費市場で販路を開拓し活路を見出す
Aグローバル化による国際価格競争の進展に伴い、生産コストが高くつく日本から豊富な若者がいる人件費の安い新興国での生産にシフトし活路を見出す。
B取引先企業の海外展開に追随または要請に対応して海外展開を積極的に進めていく。
●早めに海外展開戦略を立て行動を開始しましょう
海外展開により生き残りを図ろうと考慮されている企業は、まず手始めに新興国に的を絞った海外展開の計画を立ててみては如何でしょうか。
今までの顧客である大手企業が新興国に進出している場合、引き続き取引関係を強固に維持するには、QCD(品質、コストダウン、納期短縮)を念頭に置いて、その国に進出することが一番の近道です。その際、一見事業展開が容易に思える現地企業と資本提携を結ぶのでなく、直接投資(独資)で臨み、現地での経営権を掌握することが、後々にトラブルが生じずベストといえます。
工場の建設では土地の選定が重要になってきますが、都市部近郊で交通の便が良く、インフラが十分に整っている輸出加工区や工業団地に入居されるのが問題も少なく、立ち上がりも早いです。現地進出の大手企業からの要請があればなおさら進出が容易になります。
新興国では裾野産業が十分に育っておらず、日本の中小企業の技術力が必要なのです。
一方、日本の大企業に頼らず独立した事業を行ってきた中小企業は、目を海外に転じ現地人を活用して事業を展開するチャンスも大いにあります。この場合は、日本での伝統産業やローテク製品でも十分な需要が期待できます。また、食品とか環境や医療分野では、日本の企業の安全性の信頼が高く、現地展開の期待が高まっています。海外向けの商品は、日本での商品をそのまま持ち込むのでなく、その国の嗜好に適した商品開発を行うことも大切です。
その点では、韓国、中国や台湾企業のグローバル展開の方が進んでいます。
単独で海外展開を行う場合は、日本の商社、現地のJETROや商工会議所のような組織にコンタクトし、現地の良きパートナーを見つける努力も必要です。
海外との取引をするには英語のホームページを公開する必要があります。また、「アリババ」などの海外展示を行ってくれるサイトにも注目してください。
海外ビジネスに不慣れで、情報収集やその国への進出の仕方が分からない場合や不安があれば、海外ビジネスをサポートしている公的支援機関を活用することをお薦めします。
いま話題の成長国といわれているBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)や次の新興国として注目を集めているVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)の中では、ベトナムやインドネシア、それ以外の国では微笑みの国として以前から日系企業の進出の多い親日的なタイ国などが、政治的・人種的なトラブルが少なく、企業誘致にも積極的で、わが国の中小企業が多分野で活躍できるチャンスが多いといえます。もちろん面積が大きく人口が極度に多い中国やインド、それ以外の新興国も無視できません。
これらの国々の人口を合わせると日本の15倍から30倍にもなります。マーケットは非常に大きいのです。競合相手はグローバル化で進出しているすべての国々の企業とローカル企業です。
●海外進出で生じる問題を上手に乗り切ろう
国内で事業を行うのにも大変なのに、海外展開となるとさらに言葉や文化・慣習の違った環境のもとで、現地人を使って事業展開を進めるのですから、それなりに多くの問題に直面します。海外進出で失敗する中小企業も後を絶ちません。
海外展開での失敗を未然に防ぐためには、綿密なフィージビリティ・スタディを行うことが重要です。
現地に進出したら現地人をうまく活用するための人材教育、モチベーションの向上、現地社会への調和など異文化コミュ二ケーションを積極的に努めていくことが大切です。
また、信頼できる優れた現地人の確保、現地政府や行政機関との円滑な関係、販売・調達先の選定などにも十分配慮した対処が求められます。
このように多くの課題に直面し、これらを克服しながら現地化を行なわねばならないことを肝に命じて海外での現地展開を推進する必要があります。
海外での苦労が報いられた喜びと事業が軌道に乗って生きがいを感じている経営者も多くおられますので、成功されている先輩を手本にして取り組まれるのも良いでしょう。
●中小企業を対象とした海外ビジネス展開支援機関を大いに活用しよう
国も当然にこのままの中小企業の実態ですと、早晩多くの企業が廃業に追い込まれることを予測しています。したがって、もっともっと多くの中小企業が経済成長の著しい需要の期待できる国に進出しビジネスを展開できるようにと、下記の支援機関などで多くの支援や施策が行われています。ぜひ積極的に活用することをお薦めします。(初めてこれらの支援機関を知った際は、インターネットでまず検索し情報を得てください)
@海外情報の提供・国際化セミナー等(JETRO、中小企業整備基盤機構、東京都中小企業振興公社、 JODC etc.)
A海外販路提供・展示会支援(JETRO、中小企業整備基盤機構)
BJAPANブランド戦略展開支援(中小企業庁、JETRO)
C人材育成支援(AOTS、OVTA)
D中小企業海外投資促進ミッション派遣事業(JETRO)
E海外法務・労務・税務相談事業(JETRO、OVTA)
F海外事業立ち上げ支援事業(東京都中小企業振興公社)
G海外取引・引合い情報(東京都中小企業振興公社)
H貿易実務講習(JETRO、東京都中小企業振興公社、東京商工会議所etc.)
I日系中小企業経営・製造技術支援(JODC)
(注)AOTS :財)海外技術者研修協会、JETRO:日本貿易振興機構、
JODC:財)海外貿易開発協会、OVTA:海外職業訓練協会
今後、皆様の会社がグローバルマーケットで稼げるようになることを期待しています。
了
中小企業診断士 小谷泰三
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