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2010年12月 「今こそ、経営品質のレベルを向上させることが必要な時代です」
中小企業診断士 井上美夫
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2008年の金融危機以降、政治面はもとより経済面でも世界情勢は大きく転換してきています。特に中国をはじめとするアジア諸国の成長には目を見張るものがありますが、日本の実体経済は深刻な低迷が続いています。一部の大企業は回復基調になっているところもあるようですが、中小企業はまだまだ低迷が続いており、セーフティネットなど政府も中小企業を支援する施策を打ち出しています。
ただ、この支援を受けても特に手を打たなければ一時しのぎにしかならず、この支援を受けている間にも売上を増やすための新たな策を講じなければ、じり貧に陥ってしまうこともあり得ます。
このような時代だからこそ、企業は経営の品質を高め、常に自己革新していく組織を構築していく必要があると思います。そのためのツールとして「経営品質向上プログラム」があります。
ここではその概要について説明します。
● 経営品質とは
ひとことで言うと、“製品やサービスの質だけではなく、企業が長期にわたって顧客の求める価値を創出し、市場での競争力を維持するための仕組みのよさ”のことです。
経営品質のレベルが高い組織とは、「顧客の視点から経営を見直し、自己革新を通じて顧客の求める価値を創造し続ける組織のこと」です。このような組織を表彰する制度が日本経営品質賞です。
● 経営品質向上プログラム
経営品質を向上させるために、「経営品質向上プログラム」があります。これは、残念ながらすぐに効き目が出る特効薬とはなりませんが、経営品質の成熟度レベルを高めていくためには、大変有効なプログラムになっています。
組織が顧客に認められるためには、顧客の価値を見いだし、その価値を目指した経営でなければなりません。顧客価値を目指す経営には、まず“従来のものの見方、考え方、行動”と、“顧客価値から見たものの見方、考え方、行動”の違いに自ら気づくことが必要です。
自らのものの見方、考え方、行動を顧客価値に根ざしたものへと価値観を変革することによって、新たな戦略、プロセス、製品・サービスを生み出すことを経営革新と考え、この考えを実現するための枠組みを「経営品質向上プログラム」として具体化していきます。
「経営品質向上プログラム」は、組織が陥りがちな思考様式や支配理論に気づき、それを自ら打破して新たな価値を生み出すために、何を提供しているのかを示します。
1)顧客価値を創造する経営革新に必要な「思考の枠組み」を提供する
顧客価値を創造するための構造は、上位概念として「理念」「ビジョン」「戦略」があり、その上位概念を行動に結びつけるものとして「管理」「業務」があります。「業務」は独立した存在ではなく、組織の上位概念を実現するための連携が必要です。次に、組織の縦と横の関係を明確にとらえます。そのために、顧客価値を創造する8つの多面的な視点(カテゴリーという)からこれまでの活動を振り返り、何を革新すべきかを明らかにする基準を提供しています。
この基準を使って組織が目指している「理想的な姿」の実現に向けた経営活動の目的に合っているか、一貫性があるか、体系化されている程度や組織の内外との連携の状態を明らかにする構造になっています。
さらに、この基準は人材が独自の顧客価値を創造し続けるための組織風土・文化を形成することを目的としています。そのために組織の思考様式や対話のプロセス、知識創造と組織学習のあり方を見直し、根本的な課題を発見することを重視した構造となっています。
2)「組織の成熟度」を高める方向性を提供する
この枠組みを用いたセルフアセスメント(自己評価)によって自己革新能力上の課題を明らかにして「組織の成熟度」を高める方向性を提供します。セルフアセスメントを行うことで、組織の自己革新を行う能力が今どのレベルなのか、またそれを高めるための課題は何かを明らかにすることができます。この課題を解決することで、自己革新能力は段階的に高まるという考え方です。
● 2010年度日本経営品質賞受賞企業
2010年度の日本経営品質賞の中小企業部門の受賞企業は、(株)武蔵野に決まりました。
当社は、1956年に「ふじ薬局」という調剤薬局を開業したことからはじまり、1964年にダスキンの創業者との出会いからダスキン東京の第一号加盟店になりダスキン事業を開始しています。1989年に小山昇氏が代表に就任し、1997年に経営品質向上プログラムと出会い評価レポートのフィードバックにもとづき経営品質改善を繰り返し、2000年度の経営品質賞を受賞しています。
経営計画書による経営と環境整備を軸に、バックヤードはデジタル化し、お客様には徹底したアナログ対応による接客で、“小さなテリトリーで大きな占有率を確保する”戦略で事業を伸ばしてきました。現在、東京多摩地区のみで14の営業所でダスキンの事業を展開しています。
その後も更なる経営品質改善を繰り返し、今年度も受賞しています。今年度の受賞理由は、「衛生用品レンタル業界の競争が激化する中、同社ダスキン事業が2000年の受賞以降も堅実な成長を遂げてきたこと、自社が持つ経営ノウハウや仕組みを生かした経営サポート事業を新たに立ち上げ、ダスキン事業と並ぶ2つ目の大きな柱として成長し続けていること、さらに、社長の強いリーダーシップ体制から、現場主導型の経営体制へと、10年をかけて変革を進めてきたこと」などが評価されたことです。
つまり顧客に価値提供するために、経営トップの強いリーダーシップと、社員を含めた高い組織能力を基盤として常に変革を進めてきたということです。
● <参考>過去の中小企業部門での日本経営品質賞受賞企業
①1997年度 千葉夷隅ゴルフクラブ社
②1998年度 (株)吉田オリジナル
③2000年度 (株)武蔵野
④2002年度 カルソニックハリソン株式会社
⑤2002年度 トヨタビスタ高知株式会社
⑥2004年度 株式会社ホンダクリオ新神奈川 (現社名 Honda Cars 中央神奈川)
⑦2005年度 株式会社 J・アート・レストランシステムズ
⑧2006年度 福井キヤノン事務機株式会社
⑨2009年度 万協製薬株式会社
⑩2009年度 株式会社スーパーホテル
⑪2009年度 経営革新奨励賞 株式会社ねぎしフードサービス
⑫2010年度 経営革新推進賞 株式会社ねぎしフードサービス
⑬2010年度 経営革新奨励賞 株式会社マイマイ
中小企業診断士 井上美夫
メールはi-yoshio@mvh.biglobe.ne.jpまで願います。
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