特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2010年 8月 「先人の知恵を経営に 遠交近攻策〜ボランタリーチェーン」

●2010年 8月 「先人の知恵を経営に 遠交近攻策〜ボランタリーチェーン」

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2010年 8月 「先人の知恵を経営に 遠交近攻策〜ボランタリーチェーン」

中小企業診断士 吉村信行

メールはmusasiyn@s9.dion.ne.jpまで願います。


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1.情報化時代を生き抜く、中程度で広い関係性の構築

ボランタリーチェーンは皆様良くご存じの通り卸売業や小売業が共同購入によるコストメリットなどを出すことを目的に経営的な連携を行っている組織体です。最近では情報や高質化を軸にした品ぞろえや拡販を核とする遠交近攻策という観点からも重要になっています。

遠交近攻策は孫子の兵法ですが、かつて日英同盟でロシアに対抗したのが顕著な例です。
小売店で言えば、近くの店とは競合するが、遠くの店は競合が少ないので、協力しあうメリットが大きくなります。もう少し言えば、遠くの店と協力して近くの店に対抗するということもあるでしょう。同業組合なども共同購入などをする場合もありますが、近隣の同業も加入していることも多いですから近隣の企業との差別化はなかなかできません。

今、小売店は、新しい時代に対応した特長が無ければ生き残れない時代になったということから、品ぞろえが非常に大切になっています。コスト面のみで言えばフランチャイズの台頭から、それを越えるということは困難ですが、個店としての特長づくりや時代にあった行動をとる情報対応への機敏性、経営者の経験などを活かした連合体には大きなメリットがあります。

ボランタリーチェーンとは言っても緩い連合体の方が、その良さがいかされるのかもしれません。

そもそも情報化時代に生き抜くには中程度で広い関係性が有効であると言われています。そうした関係性のもとに、新たな品ぞろえや共同購入などのテーマごとに諸々の経営改善について情報交換をしたり、作業分担をすることは効果が大きいと言えます。

2.これからのボランタリーチェーンの方向性の例

都内のある文具店では18社が加盟しているボランタリーチェーンで経営の勉強会や共同購入をしています。文具小売業界はもともと粗利が少ない業界である上に、コンビニや100円ショップなど業態の異なる店との競争が激しく、品ぞろえにも大きな工夫が必要です。

今までは、法令様式や企業向けの請求書などの様式も大きなスペースを占めてきましたが、ITの進展に伴いその売り上げが落ちてきています。そこで、他の業態店や近隣の文具店に無い品ぞろえが必要になってきました。

例えば、趣味性の強い封筒やメモ用紙、高機能のシャープペンなど文具店も品ぞろえを強化する余地が結構あります。また、海外製品もデザインなどが良いものがあり海外からの仕入れも分担、共同すればメリットが大きくなります。また、仕入れ先やメーカーに対して新商品の企画を提案することも効果が大きいと言えます。

従来、比較的同質のものを安く揃えるということから、質が高いあるいは特長があるものを、という時代になってきました。そうした時代に合わせた方向にボランタリーチェーンも展開すれば大きな成果が得られるでしょう。

3.連携はどこから生まれるか

紳士服の小売店が都内のビジネス街の一角にあり、安さを売り物にスーツなどを売ってきましたが業績が悪くなったために店を閉めることになりました。1年前からそこに勤めていた人が居抜きで店を買い取りたい(建物は賃借)と創業の相談に来られました。

他県の卸売り企業が経営していたのです。その店の前を私も良く通っていましたが、店の前に1000円の白い安売りのワイシャツが売っているという、どうも中に入りたいとは思わない店でした。当然ながら同じことをやっていては立ち行かなくなります。奥さんと娘さんも以前勤めていた会社の定年退職金がフイになると、反対しているとのことで、さすがご本人を良く見ていると思いました。

とにかく品ぞろえを変えないとやっていけないので、良く売れている他の店を調べるよう助言しました。ちょうど仕事上の知り合いがやはり他の区のビジネス街で紳士服をやっており、見学に行ったら、カジュアルを中心に扱っており、この不況でも関係なく良く売れていると聞いてびっくりしたとのことでした。仕入れ先を聞いたらそこもかつて知っている人で、仕入れの展望もひらけたとのことでした。

相談に来られた方は長年アパレルメーカーの営業をやられており、営業のやり方はかつての時代のものではありましたが、人脈はあったのです。こうした人脈を活用して店と店が手を結んでボランタリーチェーンを作っていけば、個店でも特長ある品ぞろえや海外からの購入、インターネットと実際の店を組み合わせた販売など、店を発展させる施策が可能になります。

店が生き残り、発展するために、ボランタリーチェーンやそれに類した連携は、新しい時代に合わせたやり方によって大きな効果をもたらします。

中小企業診断士 吉村信行

メールはmusasiyn@s9.dion.ne.jpまで願います。


■―――――――――――――――――-―― NPOみなと経営支援協会−201005―■


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