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「 同行セールスで部下を育てる 」
中小企業診断士 栗田 剛志
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1.同行セールスの目的
上司と部下が同行しセールスを行う「同行セールス」には、大きく分けて二つの目的があります。
一つは、OJTの一環として営業のやり方やスキル、ノウハウを上司・先輩が実際にやって見せて学ばせることです。これは、主に新人の営業担当者や他部署から異動してきた新任営業担当者に対して行われます。
もう一つは、部下が普段の営業活動をどのように行っているかについて、上司として確認し指導するというものです。口頭や日報での報告とは違った、営業マンの生の活動を確認できる機会となります。営業現場で直面する様々な出来事への対応を直接指導できるので、とても効果的です。
要するに、同行セールスでは、マニュアル等に明文化できない事柄について実体験を交えて指導していくことを目的とします。
2.新人営業担当者に対する同行セールス
同行セールスによって、営業活動の基本的な行動を実際に行ってみせることをします。
訪問する前に部下に伝えておく事項は、下記の5つです。
@ 訪問する取引先について
A 商談の全体的な流れについて
B 商談の目的
C 商談のゴール
D 商談の際に使う資料やツールについて
まずは、訪問する取引先の概要を伝えます。どのくらいの規模で、自社とはどのような付き合いがあるのかなどを部下に把握させます。
次に商談の全体的な流れと、その商談の目的、ゴールを明確にします。ゴールにたどり着くために利用する資料やツールについて説明をします。それらを踏まえた上で商談に臨み、実際に部下に見せるのです。
商談の中では、どのような手順で商品を説明し、どのような言葉を使うのか、相手の反応にどう答えるのか、クロージングはどうするのかを示していきます。
必ず行っていただきたいのは、商談中は部下にメモを取らせることです。商談が終わったら、メモをもとに必ず感想を聞くことと、自分だったらどうしたかということを新人営業担当者自身に話させます。
ただ、見聞きさせるだけでなく、自分ならどうするかということを考えさせ、その考えを話させることで疑似体験をより深めることができます。
商談メモの一例
3.部下の営業活動をチェックする
新人の域を脱し、一人で活動するようになった営業担当者に対しては、定期的に同行セールスを行います。普段どのような営業活動を行っているのか、お客様からはどのような評価をもらっているか、などを確認できる良い機会となります。
この場合は、上司がやってみせるというより、本人に普段どのような活動をしているかのありのままをやって見せてもらいます。
商談を行う中で、なにかおかしい点があってもお客様は指摘してくれません。客観的に見ておかしい点をその場で指導することができるのでとても効果があります。
4.同行セールスの注意点
(1)自分のやり方を押し付けない
人にはそれぞれ個性があり、同じ商品を同じ相手に売るという行為一つをとってみても、それぞれやり方が異なります。セールスは独りよがりの行為ではなく、お客さんあっての行為なので、「これだ」というやり方はありません。
従って、上司が成功したやり方を部下がそっくりそのまま実行しても、必ずしも成功するとは限りません。あくまでも主体は部下となります。部下のやり方を尊重しつつ、悪いところを修正していくという方法を取ります。
(2)いい仕事ばかりでなく悪い仕事も見せる
営業活動はいいことばかりではありません。取引先に叱られる、クレームを受ける、商談内容を受け入れてもらえない等、むしろ失敗する方が多いものです。上司・先輩として、見せたくない姿も部下に見せなくてはなりません。
こんな話があります。
新人営業マンとの動向を命じられた先輩社員は、後輩を連れて得意先を回ることとなりました。調子よく何軒か回った後で、お客様からクレームの連絡を受けました。かなりご立腹の様子で、直ちにお客様のところへ向かわなければならなくなりました。内容を聞くと、明らかに先輩社員のミスでありお客様のところへ行って謝らなければなりません。お客様から叱られて、後輩の前で恥ずかしい思いをするのは目に見えています。
それまでの取引先では、後輩を先方の担当者に挨拶をさせ、名刺交換までしていました。ですが、このクレームへの対応の際は、後輩営業マンを取引先には入れず、「ここで待っていろ」と外で待たせたのでした。
後輩にとっては、怒っているお客様への対応方法、クレームの処理の仕方を学ぶとても良い機会でした。それにも関わらず、この先輩は、怒られる姿を見せたくないあまりにその機会をふいにしてしまったのです。
このように、いいところばかりを見せるのが同行セールスではありません。むしろ、悪いところを見せた方が、部下や後輩にとっては有益であると言えます。
5.同行セールスの副次的効果
同行セールスの副次的な効果として、移動中の会話がもたらす信頼関係の構築というものがあります。
同じ会社の同じチームとはいえ、普段の業務中は話せないこと、聞けないことというものがあります。同行セールスでは、比較的長い時間を一緒に行動することとなります。その際に、普段話せない話をすることができ、より深いコミュニケーションを取ることで仲間意識をぐっと強めることができます。
以上
中小企業診断士 栗田 剛志
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