特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2009年9月大不況突破のヒント・・・新機軸による売上高のアップ方策

●2009年9月大不況突破のヒント・・・新機軸による売上高のアップ方策

■経営お役立ち情報 ビジネスヒント情報―――――――――――――――■

「 大不況突破のヒント・・・新機軸による売上高のアップ方策 」

中小企業診断士 吉村 信行  
mail to:musasiyn@s9.dion.ne.jp

■――――――――――――――――――― NPOみなと経営支援協会−■

(少し長いですが、最後までお読みヒントをつかんでください。)

1.はじめに

今回の大不況は、米国サブプライムローン問題に端を発した金融恐慌が実体経済にも波及して世界を巻き込んでしまいました。我が国では当初金融面での直接的影響は少なかったものの、輸出の大幅減少によって、大幅な売上高の低下や企業の格付け低下による貸し渋りが発生しております。

港区においても、リーマン社が区内にあったことから、その事務所の撤退などにより、いわゆるリーマンショックも直接的で、大きな影響が出ています。

そこで、その脱出への方策ですが、まずは事業コスト構造の改善や資金調達が重要となりますが、現段階は売上高を回復し、さらに成長への足場を固める時期といえましょう。

以下、売上高アップの主要方策についてご紹介いたします。

2.大不況に立ち向かう事業展開の着眼点

有効な売上高の向上策につきまして、私も参加した樺央総合研究所の行った各企業の調査を積み上げた結論を一言でいいますと、構造転換を加速する動乱期にあって、新機軸を打ち出すということです。

各企業・消費者とも急激で大きな受注減、収入源に陥っております。従いまして、各企業・消費者とも効用を落とさずに安く購入できないかと必死に新しい商品、企業、店、方法を探し回っています。ここから好況時より新機軸に対するニーズが高くなっています。

景気の良い時はことさら新しいことをしなくても、従来の延長線上の方策で売上げを上げることができます。大不況時は社会全般に何とかしなくてはというムードが広がり、従来路線を変更するニーズが高まってきます。すばやくその流れに乗ることができた企業が大きな成果を挙げることができています。

では、売上高アップのための新機軸とは何か。次の切り口に従ってご紹介します。

(1)新しい商品・サービスの提供
(2)新しい販売促進方法
(3)新しい販売チャネル・顧客
(4)新しい企業価値

3.新機軸の具体的内容

(1)新しい商品・サービスの提供を行う
@売価を30%下げた商品企画、低価格帯の品揃え拡大
例えば、以下のような方策があります。
・衣服などデザイン性をより重視しつつも海外生産により安いものを提供する。
・業務用の高額商品は新品だけではなく、リサイクル品も販売する。
・酒類など、味にひけをとらない低価格帯を充実させ、そのかわり「いわれ」をPOPなどで丁寧に紹介する。
など。
要はユーザーの満足度(効用)を下げずに大幅に価格を下げる工夫が大切です。
 
A新設からメンテへのシフト
例えば、以下のような方策があります。
・内装工事や設備工事業がかつて手がけたユーザーにメンテを売り込む
  ・情報システムの開発業が既存のシステムのメンテということで、システムの改善や既存ソフトのカスタマイズを行う、などがあります。    企業も家計も高額商品の新規購入は控えますから、メンテの必要性が高くなるのが道理です。また、新しく購入する代わりに、この際メンテをしようという需要が増えます。したがって、そのことに着目した方策が有効になります。

B自社の資源を活かした新事業・新製品づくり
例えば、以下のような方策があります。
・自社の人材を活かす点では人材派遣業、業務請負、教育研修請負など
  ・自社のスペースや工程、技術などを活かす面では休日のイベント、自動車修理工場の洗車の事業化など
・自社に対するユーザーの評価を活かす面では、飲食店の弁当や仕出しなどがあります。
人材やスペースなど固定費にかかわる部分で余剰が出ている場合は、それらを活用して新事業を起こすことも有効です

Cユーザーのニーズを早期に商品化する手法
  仮説を利用してユーザーの潜在ニーズを引き出すことは、ほとんど全ての業種の開発に適用可能です。これはユーザーの経験(感性)を引き出す方法で、新製品の開発で最も重要な手法です。

2.新しい販売促進方法をあみ出す

@不況を逆手にとった拡販方法
不況下では企業も消費者も安いものはないか、掘り出し物はないかと血まなこになって探しています。円高差益還元セールや不況を理由にした期間限定サービスなどが受け入れられることは理にかなっています。デフレ対応の商品・サービスを「今がお得」ということでPRします。

A顧客の拡販ニーズへの提案
顧客企業も自社と同じように、自社製品の拡販に血眼になっています。拡販に寄与する新しい商品・サービスへのニーズは不況で逆に高まっているのです。そこで、顧客企業の拡販に役立つ提案をすれば、受け入れられる可能性が高まり、いままで取引がなかった場合は新規受注のチャンスでもあります。

B稼動のバラツキを少なくする販売促進
飲食店などではタイムサービスは結構実施されていますが、金曜日以外の平日対策は意外に行われていません。不況下においては、特に来客のバラツキが大きくなります。

平日は来客が極端に少なく、週末は入りきれないという店もかなりあります。普段はできるだけ外食を控えながら、週末だけは気晴らしをしたいということでしょうか。そこで、平日サービス券を発行して飲み物などをサービスして、週末に来る顧客をいかに平日に来ていただくかという方策が有効になります。ありきたりの方法ではありますが、こうした方策をきめ細かく行うことも大切です。

C真の提案営業の実施
この不況下でも「待ち」の営業スタイルが多く見受けられます。この場合「待ち」の営業とは、自分の会社はこういうことが出来るが、何かに使ってもらえないかと聞いたり、依頼してまわることです。

つまり自分の会社ができることを、相手の会社のどこそこに使えないか
とアピールして仕事が来るのを待つわけですが、これでは時間がかかり、不況脱出に間に合いません。それを提案営業と称している場合が多いのです。

そうではなくて、相手の会社にとってこういう点でこれだけメリットになることがあるので、これを使ったらいかがですかと、相手に提案してまわる方がはるかに拡販効果が高くなります。

(3)新しい販売チャネル・顧客をつくる

@流通ステップの短縮を売り込む
  この不況で業界平均より売上高を大きく減らしている企業のかなりの部分がこの流通ステップの短縮の影響を受けています。逆にそれによって売上を伸ばしている企業もあります。

「大不況とは構造変換を加速する動乱期」の最たる例と言えます。その点で、少しおおげさに言えば下克上の時期とも言えます。

A企業向けから民生用への転換
  企業を顧客にして大きく売り上げを落としている企業は一般消費者向けを拡大するのも手です。
  例えば、飲食店では企業の高額接待などの顧客が多かった店は、個人客を開拓する必要があります。自腹で来ることができるようなメニュー構成があれば、接待費で来ていた顧客が奥様や家族を連れて、また友人とも来ることができるのです。

B販社を活用する
  流通ルートの短縮と逆ですが、例えば、設計会社が社員を設計に特化させ、営業は販社に任せて売上を伸ばしている例があります。

C伸びる産業分野への食い込み
今後伸びる可能性が高い分野には主なものとして次の分野が挙げられます。
・国の政策で重点的に伸ばす産業分野
〜環境ビジネス(クリーンエネルギーや3R関連)
〜少子化対策・教育ビジネス
・人口構成上伸びる分野
〜高齢者ビジネス(介護施設、高齢者向け余暇関連、高齢者向けインターネット関連、宅配システム)
〜健康ビジネス(ケア商品、アンチエイジ商品)
・社会的ニーズにより伸びる分野
〜食の安全確保(トレーサビリティシステム等、産地直販等)
〜家事支援(中食、食器洗浄機等の自動家事製品)
〜非接触型ICチップの利用
・産業構造の変化によって伸びる分野
〜通信・情報
   〜バイオ  などなど
  自社の技術や顧客関係を利用して、こうした分野に食い込んでいくことも今後重要です。

(4)新しい企業価値をつくる

@アピールできる企業力をつける
・企業の資格取得 例えば生産が繁忙でないこの時期に、出版業がプライシーマークをとったり、各業種で環境適合の資格を取ったりすることです。また、営業員全員に電気工事施工関係の資格をとらせてアピールしている工具の販売会社もあります。

A従業員の動機付け
特にサービス業は従業員が会社に満足していなければ、従業員が顧客に心からの笑顔を見せるのは困難です。何かと後ろ向きの対策を強いられる昨今、経営者は裸になって従業員と向かい合うことが大切です。

B事業の構成を変える
不況期は業種が異なる複数の事業を行っている企業にとって不採算事業 を整理する機会でもあります。売上高は減りますが、人も含めて他の企業に受け入れてもらえれば打撃は少なくて済みます。事業を長年やっている企業は不採算部門を温存している場合が結構あります。長年の顧客や従業員などのことがあり、整理にふん切りがつかないのです。しかし、今後の展望が無い事業に魅力はありません。特に若い従業員にとっては、蛇の生殺しのような状態になります。不況期ではこうした企業、事業が限界に達し、見極めをつける時期でもあります。

C企業連携
多くの企業が不況で売上げを落としています。こういう時は新たな仕事を求めての企業のネットワークを作りやすいのです。景気の良いときは各企業ともお腹が一杯で連携して新しいことに挑戦するのがおっくうで、消極的になりますが、こういう時期は可能性が高まります。自社だけでは実現困難な、ユーザーニーズに合致した新商品やコストが安いものを連携してつくりあげるチャンスでもあります。
  
最近では新商品作りの連携の必要性が増大し、川上から川下への企業3〜4社が連携すると効果的です。

以上、駆け足で現下の不況下の売上高アップに役立つ方策項目をご紹介しました。詳しいことがお知りになりたい方は「NPOみなと」までお問い合わせください。

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また、以上の方策は大部分が経営革新に結びつく方策です。経営革新計画の策定により都の助成金を得たり、融資で有利な扱いを受けることが可能です。

以下に、その概要をご紹介いたしますので、詳しくは「NPOみなと」にお問い合わせください。「NPOみなと」では経営革新計画を作成するお手伝いもしております。

<経営革新計画に基づく都の助成金>
・市場開拓助成金:助成限度300万円
  (内容)展示費用など 総額の1/2以内
・新製品新技術開発助成金:助成限度1500万円 総額の1/2以内
・申請:毎年1月〜2月
・窓口:東京都中小企業振興公社

<経営革新計画とは>
・新商品の開発や生産
・新役務(サービス)の開発や提供
・商品の新たな生産方式や販売方式の導入
・役務(サービス)の新たな提供方法の導入
その他の新たな事業活動を通じて、付加価値を高める計画です。

また、現在(平成21年9月)、都の緊急対策として次の助成金が利用可能です。
名称:受注開拓緊急支援助成事業
内容 @展示会参加費用等の助成
    対象:国内外の展示会・見本市等への出展及び新聞・雑誌等への広告掲載
    ・限度 150万円
    A製品カタログ等作成費用の助成
対象:製品カタログ・パンフレットの印刷・配布
    ・限度 30万円
 利用の主な要件は、中小企業で昨年度より売上高が下がっていること、経営力向上プロジェクトの企業診断トアドバイスを受けることなどです。
詳しくは「NPOみなと」にお問い合わせください。

                                以上

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

中小企業診断士 吉村 信行
mail to:musasiyn@s9.dion.ne.jp




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