●2009年9月解雇についてのトラブルを少なくするために
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「 解雇についてのトラブルを少なくするために 」
中小企業診断士 藤平 征也
mailto:yukifuji@green.ocn.ne.jp
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個別労働紛争の件数は年々増加しており、厚生労働省の資料によれば、平成20年度に全国の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争相談件数は約24万件、その中で解雇に関するものは1/4と極めて大きなウェイトを占めています。
個別労働紛争の件数も多く、労使双方にとって重大な問題である解雇のポイントについて整理してみました。
■解雇とは使用者の一方的な意思表示による労働契約の解除、実施には厳しい規制があります。
解雇は、以下の3つに分けられます。
@力不足・適格性欠如等、労働契約継続を困難とする事情により行う普通解雇
A企業経営の悪化等により人員削減のために行う整理解雇
B重大な企業秩序維持義務違反をした者に罰として行う懲戒解雇
解雇は、使用者の一方的な意思表示により労働契約を終了する点が、労使合意もしくは労働者の一方的意思による退職、労働契約期間等の満了、労働者の死亡等の他の労働契約終了と大きく異なります。このため、労働者保護の観点から解雇は厳しく規制されます。
■合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は無効
平成20年3月31日から施行された労働契約法第16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。
「解雇の客観的合理的な理由」については、ユニオンショップ協定による解雇、勤務成績不良・能力不足・適格性欠如、傷病等による労働能力喪失、非違行為、企業業績悪化等の経営上の理由等があります。
また「社会通念上の相当性」の判断については、客観的合理的理由があっても解雇することが過酷に失しないか、あるいは他のケースと比較して重すぎる処分ではないか等が考慮されます。
解雇が権利の濫用になるか否かについては、過去の判例をもとに解雇の理由や必要性、社会的な相当性などを総合的に考慮して判断されます。
■整理解雇が有効とされるための4要件
整理解雇を巡りトラブルとなるケースは多く、これまでも多数の判例がありますが、整理解雇を有効とされるには、以下のいわゆる4要件を具備することが必要とされます。
@人員削減の必要性があること
A使用者が解雇を回避するための努力を尽くしたこと
B被解雇者の選定が合理的なものであること
C労働組合や労働者に対して解雇に関する協議や説明を行ったこと
■懲戒解雇には更に厳しい条件
懲戒解雇は労働者の汚名となり、退職金支払いなしや減額など労働者に極めて大きな不利益を与えることから、慎重な対処が必要です。
懲戒解雇については、以下の要件が必要とされます。
@懲戒事由と懲戒手段が就業規則に明記されていること
A@の規定内容に合理性があること
B懲戒事由に該当する非違行為があること
C非違法行為に対して相当な処分であること
D同種の非違行為に対する懲戒処分は同等であること
E弁明機会の付与等処分手続きが適性であること 等
■労基法等の解雇禁止規定
労基法等には以下のように解雇禁止の規定があります。
@業務上の負傷による休業・産前産後休業中・その後30日の解雇
A国籍・信条等を理由とする解雇
B公民権行使を理由とする解雇
C監督機関への申告を理由とする解雇
D公益通報を理由とする解雇
E性別による差別解雇
F女性労働者に対する婚姻・妊娠・出産・産前産後休業を理由とする解雇
G育児休業・介護休業取得を理由とする介護
H不当労働行為となる解雇
I解雇予告をしないまたは解雇予告手当を支払わない即時解雇 等
これらは法律により禁止されています。
■解雇のトラブルを少なくするために
解雇は最後の手段です。解雇をせざるを得ない状況を作らないための経営努力や日常の職場・社員管理が何よりも重要ですが、加えてトラブルを少なくするためには次のような対策が重要です。
@解雇に関する規定を含め就業規則を整備し、周知しておくこと。
A労働契約に際しては、解雇に関する事項も明確にしておくこと。
B労基法等の解雇禁止規定に十分留意すること
C非違行為や成績不良の社員に対しての指導・教育訓練を行うなど会社として改善努力を惜しまないこと。
Dその上で解雇せざるを得ない状況の場合、最終手段として解雇を決断すること。
E解雇を行うに際しては、労働者への説明等の手続きに配慮すること。
以上
中小企業診断士 藤平 征也 E-mail:yukifuji@green.ocn.ne.jp