●2009年8月営業職よ 顧客ニーズを聞くために必要なこと
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「 営業職よ 顧客ニーズを聞くために必要なこと 」
〜社会経験がモノをいう営業職だが、経験不足を補う聞く力を養う〜
■――――NPOみなと経営支援協会 中小企業診断士 栗田剛志■
1.経験不足は補うことができる
何事にも「経験に勝るものはない」と言われます。経験を積むには、ある程度の時間が必要であり、その経験を得るためのチャンスにも恵まれなくてはなりません。経験は、まさに「積む」もので、積木と一緒です。間を抜かすことはできませんし、積んだ積木が役に立つのは後々になってからです。
新しいことを始めるに当たっては、誰もが経験不足という状況から始めなくてはなりません。経験は、誰もが欲しいと思うものの、一朝一夕に身に付くものではありません。だから経験は貴重だと言えるのです。
営業の世界においても、経験は結果を左右する重要な要素です。ベテランの営業パーソンが、たくさん契約を取ってくるのは、その人自身の実力もさることながら、経験がものをいっていることも事実です。
では、営業において経験不足を補うにはどうしたらいいでしょうか。
営業は、モノを売ることが仕事です。「売れる」「売れない」を決定する重要な要因は、顧客ニーズのツボを押さえることができるかどうかにあります。
どんなに良い商品やサービスであろうと、お客様が欲しいと思わなければ買ってはもらえません。
逆に考えれば、顧客ニーズのツボさえはずさなければ、新人であろうと、中途採用者であろうと、経験が少なくとも売ることができるのです。つまり、顧客ニーズを的確に把握すれば、経験不足を補い営業として結果を出すことができるのです。
では、お客様のニーズをがっちり掴むにはどうしたらいいのでしょうか。
その答えは、「聞く力」を向上させることです。
お客様の本当に欲しいものはお客様にしかわかりません。予想することはできますが、確実に当たるとは限りません。ベテランの営業パーソンがすごいのは、それまでの経験からこの予想を当てる確率が高いことです。
経験の浅い営業パーソンは知らないことは知らない、わからないことは分からないとして、それをお客様に教えてもらえばいいのです。
聞く力を高めて、顧客ニーズをしっかり掴むことさえできれば、経験の差を埋めることができるのです。
2.聞く力をアップするコツ「心・技・体」
聞く力をアップするコツを心・技・体という3つの切り口で説明していきます。
(1) 心
人は、自分の知っていること、思っていることを話したがります。そして、話したことに反応してもらえるとうれしくなり、さらに話したがります。
お客様の前に立った営業パーソンは、「売らなくては」という気持ちが先走ったり、新しく仕入れた商品知識を早く披露したくなったりします。すると、どうしても自分の方から話そうとする傾向が強くなってしまいます。
営業の場では、この気持ちをぐっと我慢して、相手の話を自分が話す3倍は聞くように心掛けます。どうしてもそれを忘れて、しゃべり始めてしまう人は、商談の際に広げる手帳に「聞く」と大きく書いておくとよいでしょう。それくらい、お客様の話を聞くことは大事なことであり、強く意識しないといけません。
(2) 技
相手に積極的に話をさせるテクニックの一つに質問することが挙げられます。
質問には、大きく分けて2つの種類があります。相手が「はい」「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンと、相手が自由に答えられるオープンクエスチョンの2つです。
クローズドの質問は、どうしても答えが短くなってしまうので、質問が多くなり、度が過ぎると尋問のようにも受け取られてしまいます。相手に多くを話してもらうために、オープンな質問をすることで、話を発展させていきます。質問数を抑えながら、相手に自分の考えや思いを話してもらうことでニーズ発見の糸口を見つけていきます。
(3) 体
会話中にはどのような態度をとっていけばいいのでしょうか。
こちらの方から、お客様が話しやすい雰囲気を作らないと積極的に話をしてはもらえません。相手の目を見て、相槌を打ち、お客様の言った言葉を繰り返して、ポイントのメモを取る。これらを組み合わせることで、お客様の話をよく聞いているということをはっきりと示します。こうすることで、お客様の気持ちが乗ってくることによって話が弾み、お客様自身も気づいていなかったニーズを発見することができることもあります。
無反応では、たとえこちらがしっかり聞いていたとしても、相手に伝わることはなく、会話は盛り上がりません。相手は心を閉ざしてしまい、本当のニーズを聞き出すことは難しくなるでしょう。
3.心・技・体を支える最も重要なこと
以上、3つの方法、「心・技・体」を実践するには、事前の準備が重要となってきます。営業のテクニックではベテランには到底かないません。その場のアクションで差がついてしまうことは、ある意味仕方のないことです。
したがって、経験の浅い営業パーソンは、時間をかけることができる事前準備をしっかり行う必要があります。
こちらの方から話したがるのは、不安だからです。事前に相手のことを知ることによって余裕が生まれ、聞く気持ちが生まれます。
また、限られた商談時間の中で、お客様のニーズを捉えることができるような核心を突く質問をするためにも事前準備は重要となります。調べれば簡単にわかることを聞いて貴重な商談時間を無駄にはできませんし、質問されるお客様にしてみれば、「それくらい調べておけよ」と思うのは当然のことです。
相手のことを深く知った上で商談に臨めば、「お客様のことにこれだけの興味があります」ということを相手に伝えることができるので、お客様も心を開いてくれるのです。
以下に、事前準備をするにおいて、押さえておきたいポイントを示します。
(1) お客様のこと
商談するお客様が企業であれば、その会社の理念、売上、商品構成、顧客、ビジネスモデル、組織などは事前に調べておくべきでしょう。
一方、個人のお客様であれば、年齢、職業、家族構成、余暇の過ごし方、価値観といいたことを押さえられると会話もスムーズに進みます。
(2) 業界、市場のこと
お客様が属する業界の規模、成長性、消費者の判断基準、シェア、相場、何が支持されているのか等を押さえていきます。
一般消費者の立場で考えてみることで、お客様に対して新しい気付きを与えることができ、関係を進展することができるかもしれません。
(3) 競合のこと
お客様とお客様のライバルとの違いを押さえましょう。どこが勝っていて、どこが劣っているのか。提案の精度を高めるヒントは、ここに隠されていることが多く見受けられます。お客様が差別化を図る上で、どこに注力しているかを見極めて、提案に活かします。
最低限この3つを押さえて商談に望めば、お客様の話を理解することができ、お客様の言葉への反応も違ってきます。質問の有効度も高めることができます。
調査するにあたって、最もよく活用されるのはインターネットでしょう。お客様のホームページを始めとして、業界の情報や競合の情報といったものは、そのほとんどがインターネットで調べることができます。
言い換えると、調べよう思えばいつでも誰でも調べることができるのです。事前準備とは、当然行うべきことであり、調べていないこと自体が失礼に当たります。
事前準備をしっかり行い、現場では心・技・体を心がけることで聞く力を向上させれば、経験不足に負けない結果を出すことができるでしょう。
以上