特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2009年6月「借りすぎではありませんか、チェックして見ましょう」

●2009年6月「借りすぎではありませんか、チェックして見ましょう」

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「 借りすぎではありませんか、チェックして見ましょう 」
中小企業診断士 平田 仁志 

■―――――――――――――――――NPOみなと経営支援協会■

銀行で長年働いた後経営コンサルタントになり、経営相談で沢山の会社の決算書を拝見しました。拝見して思うことは借入金が多すぎる会社が多いと言うことです。

どの位の借入が適正かということを理解しないで、なんとなく苦しいからお金がもう少しあれば助かると言うことで安易に借入をしてしまっているケースが沢山有ります。本当は必要の無いお金を銀行が勧めるままに借りた結果、借入金利息の支払いで赤字が続き債務超過寸前と言う会社も有りました。

借りすぎは危険です。借入残高を適正水準に保つと言うことは経営管理上の重要な問題だと考えてください。銀行からお金を借りるときは、本当に事業の存続のために必要か、事業から上がる利益で返せるかということを考えなければなりません。

緊急支援融資によって何とか倒産を出さないようにしようとしている状況に逆行するようですが、緊急避難措置というのはあくまでも緊急時の特別措置です。何が正常か、をしっかりと認識しておくことが大事だと思いますので敢えてこのようなテーマで書かせていただきます。

それでは、どのくらいの借入だったら正常なのか、と言うことを以下で大まかにではありますが説明させていただきます。長年の経験から運転資金の額と借入残高の関係が一番重要と考えていますので以下では運転資金と借入の関係を中心に述べることとします。

1.運転資金とはどんなものか
運転資金という言葉はお聞きになったことがあると思いますが、その意味は何かと言うことについて十分理解されていないのではないかと思うことが多いので、まず運転資金とは何かということから説明を始めます。

運転資金は事業を運営するために必要となるお金です。そのように言うと、人件費や商品仕入れのためのお金と考えがちですが、借入金との関係を考えようとするときにはその理解では不十分です。なぜかと言うと事業をしていれば、当然支払いだけでなく売上によって入ってくるお金もあるからです。

銀行は運転資金借入の額が次の式で計算した運転資金の金額以内であれば正常と考えています。

運転資金 = 売掛金 + 在庫 − 買掛金

決算書の貸借対照表の数字から計算します。損益計算書は運転資金の計算では見ません。貸し出しをするかしないかを決めるときは損益計算書も当然見ますが、運転資金の額を計算するときは貸借対照表から計算するのです。

事業を進める上でのお金の流れを考えると次のようになります。簡略化のために物品販売業で考えます。まず商品を仕入れ、人件費や家賃を支払い、商品を売って資金を回収して利益が残る、と言う流れです。

仕入れ資金は月末締めの翌月払いということが多いと思います。人件費や家賃は毎月支払います。仕入れた商品は売れるまで在庫として持っていなければならず、売れたとしても、クレディットカードでの支払いや掛売りもあって例えば月末締めの翌月末払いとか翌々月末払いとかになることがあります。

もし仕入れたものが全てすぐに売れて全部現金だとすれば利益の分が手元に残るはずですが、そうは行かないために必要となるのが運転資金です。

逆に言うと、上記の式で計算した運転資金は健全な事業活動のために必要な資金なので銀行はその範囲内なら貸しやすいのです。

2.借入残高管理は経営の最重要課題
さて、上記の式でご自分の会社の運転資金額を算出して借入金の額と比べてみてください。もし借入金の残高合計が上記で計算した運転資金の額より小さければ問題ありません。もし上回っていても、短期借入の額が運転資金の額より小さく、長期借入が運転資金及び事業用設備取得のために使われていれば大丈夫です。

しかし、多くの会社では借入残高が運転資金を大きく上回っていて、その上回っている金額が事業等設備の額を上回っている借入過多の状態に有ります。上回っている部分を銀行は正常で無い運転資金と考えます。

なぜかと言うと、上回っている理由は赤字補填資金の場合も有りますし、事業収益を生まない不動産取得等の費用に当てられていることも多いからです。社長に対する仮払金であったり関連会社への貸付金の場合も有ります。従って、その部分は返済の可能性に問題が有るのではないかと考えるのです。

そのような場合、銀行としては、あまり借入はしないようにしてできるだけ借入残高を減らしましょう、と言うべきだと考えますが、そうでなく担保も有るので借りても大丈夫です、という銀行もあるようです。沢山借りてもらえば沢山利息が払ってもらえるから何とか返せるのなら良い、という論理なのかもしれません。その極端な例がサブプライムローンです。返済能力がない借り手に住宅の価値だけで貸し続けた結果返済が行き詰まり世界経済の大混乱の原因となったのでした。

銀行がいつもお客様である貸出先の利益を最優先に考えていると考えてはいけません。中には自分の銀行が儲かれば良いと言う銀行もあるようなので、銀行の言うとおりに借りるのではなく自分でどこまでなら大丈夫、と言う判断をしなければならないのです。

「貸すも親切、貸さぬも親切」と或る信用金庫の社長がおっしゃったとおり、事業の継続発展のために必要な借入れももちろん有りますが、過度な借入は有害です。返済負担に追われてしまい事業のために本当に必要なお金の手当ができないという本末転倒のことが起きてしまうからです。

油断をするとすぐ借入金が増えてしまうので、経営管理の最重要課題として「借入残高管理」を考えなければなりません。事業から十分な返済資金が捻出できない状態で借入金を増やしていくと、事業を止めたら銀行から借りたお金を全部返さなければならなくなるけど返せない、だから事業を止められない、死ぬまで会社を続けるしかない、というつらい状況に追い込まれることになります。

3.借りすぎの場合の対応について
借りすぎだと言うことをしっかりと認識することができれば多くの場合借入額を減らす方法は有ります。しかし、その方法は会社の状態によって異なります。

まず会社の過去の蓄積である自己資本の水準や現在の収益力がどうかと言うことを考える必要が有ります。その時、これから成長する会社なのか、成熟期の会社なのか、衰退が始まっている会社なのか、という発展ステージを考えることも重要です。

どのような場合でも経営者が明確に経営や資金調達等に関する方針を打ち出し堅持することが重要です。

どうすることが一番良いか確信が持てない場合は、われわれ中小企業診断士にご相談ください。
                                         以上


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